もはや他人事ではない「生涯現役」時代。なぜ老後資金は足りなくなるのか?
「年金だけじゃ生活できないのでは?」「定年後も働き続けないといけないの?」
こうした不安は、今や現役世代の共通の悩みとなっています。かつての「60歳で定年し、年金で悠々自適な老後」というモデルは、もはや過去のものとなりました。
結論から言うと、その不安は現実のものとなりつつあります。国は「人生100年時代」を掲げ、私たちに「生涯現役」でいることを求めています。その背景には、国の財政を揺るがす深刻な問題があるのです。
この記事では、なぜ従来の考え方では老後資金が足りなくなるのか、その根本原因と、私たちが今から何をすべきかを分かりやすく解説します。
終身雇用の崩壊と「生涯現役」時代の到来
「生涯現役社会」という言葉を聞いたことがありますか?これは、年齢にかかわらず、誰もが意欲と能力に応じて働き続けられる社会を目指すという、政府が掲げるスローガンです。
聞こえは良いですが、裏を返せば**「国はもう、あなたの老後の生活を年金だけで支えきれません」**というメッセージでもあります。その最大の原因が、国の財政を蝕む「少子高齢化」です。
【国の台所事情】
- 収入が減る:税金を納める現役世代(生産年齢人口)がどんどん減っている。
- 支出が増える:年金や医療・介護など、社会保障費を受け取る高齢者がどんどん増えている。
この収入減と支出増のダブルパンチにより、国の財政は火の車。もはや、従来の年金制度を維持することは困難なのです。
根本原因は「生産年齢人口」の激減
問題の本質は、生産年齢人口(15歳〜64歳)の急激な減少にあります。

(出典:厚生労働省)
このグラフが示すように、日本の労働力の中核を担う層は、1995年をピークに減り続けています。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2050年には約5,275万人にまで減少すると予測されており、これはピーク時の3分の2以下の水準です。
税金を納める人がこれだけ減れば、国の収入が激減するのは当然です。この構造的な問題を解決しない限り、私たちの負担が増え、受け取るサービスが減っていく未来は避けられません。
「70歳まで働く」が当たり前の時代へ
こうした状況を受け、国は企業に対して、従業員がより長く働ける環境を整備するよう求めています。
2021年4月には改正高年齢者雇用安定法が施行され、企業には以下のいずれかの措置を講じることが**努力義務**として課せられました。
📝 70歳までの就業確保措置(努力義務)
- 70歳までの定年引き上げ
- 定年制の廃止
- 70歳までの継続雇用制度(再雇用など)の導入
- 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
- 社会貢献活動に従事できる制度の導入
多くの企業では、人件費を抑えられる「再雇用制度」が主流ですが、給与は現役時代から大幅に下がるケースがほとんどです。もはや「60歳」や「65歳」が一つの区切りではなく、70歳まで、あるいはそれ以降も何らかの形で働き続けることが前提の社会になりつつあります。
副業解禁は「自己防衛」の始まり
終身雇用が崩壊し、一つの会社に頼るリスクが高まる中、政府は「働き方改革」の一環として**副業・兼業**を強力に推進しています。
かつては一部の先進的な企業に限られていましたが、現在ではメガバンクをはじめ、多くの大手企業が副業を解禁。この流れは今後さらに加速するでしょう。
これは、企業側が「社員の生涯の面倒は見きれない」という本音の表れでもあります。会社に依存するのではなく、複数の収入源を持ち、自らのキャリアを築いていく「自律した個人」であることが求められているのです。
結論:国や会社に頼る時代は終わった。今すぐ「経済的自衛」を。
ここまで見てきたように、国や会社の仕組みは、私たちを生涯にわたって守ってくれるようには設計されていません。むしろ、「自分の力で備えてください」という方向へ大きく舵を切っています。
年金制度に過度な期待をせず、老後資金は「自分で作る」という意識を持つことが何よりも重要です。幸い、政府はNISAやiDeCoといった、個人の資産形成を後押しする税制優遇制度を用意しています。こうした制度を最大限に活用し、一日でも早く「経済的自衛」の一歩を踏み出すことが、厳しい未来を生き抜くための鍵となります。
▶︎ 実際の年金受給額データも参考に、より具体的なイメージを掴んでみてください。
→会社員の年金受給額はいくらくらいなのか?【実際のデータ公開】