財政検証2019レポートの読み方「公的年金の未来」

2019年8月27日、ようやく財政検証2019が公表されましたので、中身を読んでみました。

早速、解説していこうと思います。


財政検証とは「公的年金の未来」を占う重要な資料

財政検証とは、平成16年に導入された公的年金制度の健全運営のために導入された制度です。

経済情勢の変化を踏まえて、様々な要素を検討して、年金財政を検証しています。

5年に一度行われており、前回は平成26年に行われました。

令和元年(2019年)は財政検証の年ですので、今回は最新の財政検証について解説していきます。


財政検証2019で設定されている「経済前提」とは

財政検証では、日本が将来経済的に良くなるのか、悪くなるのかなど様々なケースに分けて、年金の未来をシミュレーションされています。

まず重要なのは、経済前提という考え方です。

年金財政は日本経済が将来どうなるかによって、大きく変わります。

なぜなら、「今は払えるけど、10年後払えませんでした」では困るからです。

将来的に、年金財政が厳しそうなら今のうちから年金受給額を減額し始める必要があります。

そのように、日本経済が今後どのように推移するかによって今の年金水準や保険料は変えなければならないという話です。

経済前提とは、今後の日本がどのような経済情勢を推移するかをいくつかのケースに分けている前提です。


財政検証2019の経済前提は6つのケースで検証

財政検証2019では、6つの経済前提でシミュレーションされています。

下記に、6つのケースを財政検証レポートから抜粋します。

令和元年 財政検証レポートより抜粋

ケース1から6に分類されています。

詳細に見ていくと、非常に分かりにくいので、賃金上昇率に焦点を当ててみていきます。

賃金上昇率は、給料(ボーナス含む)のことなのでイメージしやすいと思います。

日本経済が成長して、給料が良くなっていくパターンや、全然変わらない或いは、減少するなどさまざまなケースが考えられます。

実際、2000年からの賃金推移を見てみると減少し続けています。

下の図を参照

『日本の国難』P151の図より

実質賃金も名目賃金も2000年以降下がり続けています。

名目賃金とは

名目賃金とは、額面給料をイメージしてもらえば良いです。

一般的にイメージされる給料の額です。

単純に金額ベースで給料が増えたか減ったかを示すのが、名目賃金です。

ただ、名目賃金が増えたからと言って単純に生活が豊かになっているかどうかは分かりません。

例えば、物の値段が上昇した場合です。給料以上に物の値段が上がった場合、買える物の量は減ってしまいます。

毎年2回旅行に行っていた人が、1回しか行けなくなった場合実質貧しくなっていると言えます。

給料が増えても、それ以上に物価が上がれば実質的には貧乏になっています。

それを知るための指標が、「実質賃金」となります。

実質賃金とは

名目賃金を物価指数で割り戻した値です。

つまり、物価の影響を取り除いた本質的に生活が豊かになっているかどうかは実質賃金の方が正確に分かります。

もう一度2000年以降の名目賃金と実質賃金の推移を見てみます。

『日本の国難』P151の図より

名目賃金も、実質賃金も下がり傾向にありますが、2007年〜2009年にかけて大幅に下降しています。

これはリーマンショックが大きな要因だと考えられます。

倒産した会社や、職を失った人などが増えたため名目も、実質も大きく下落しています。

また、2014年付近を見ると、名目賃金は横ばいにも関わらず、実質賃金が大きく下落し折れ線グラフが交差しています。

これは消費税増税(5%から8%への引き上げ)が大きく関係していると考えられます。

消費税増税は、強制的な物価の引き上げを起こします。

給料が変わらないにも関わらず、物価だけが上がれば当然実質賃金は下落していきます。

つまり、日本人はますます貧乏になっているということです。

財政検証の経済前提は、実質賃金でみている

なぜ名目賃金と実質賃金の解説をしたかというと、財政検証レポートの経済前提は実質賃金を指標にしているからです。

実質賃金についての理解がなければ、経済前提自体が理解できないためはじめに予備知識として解説しています。

もう一度財政検証2019年レポートの経済前提をみてみます。

実質賃金のところを赤枠で囲っています。

経済前提は、6つのケースを想定しています。

ケース1が一番日本経済が良かった場合、ケース6が一番悪い経済状態たった場合です。

実質賃金をみて見ると、ケース1の場合1.6%の上昇率で経済成長した場合を想定しています。

ケース6は、0.4%の上昇率で成長した場合で年金受給額がどうなるかをみています。


名目賃金と実質賃金の違いについては、YouTubeの方でも解説していますので、文字よりも動画で解説を見たいというかたはこちらをクリックして下さい(^ ^)

年金支給は所得代替率50%以上を目標としている

年金財政を運営指定く際、所得代替率50% 以上を維持することを目標としています。

財政検証2019レポートでは、将来の年金支給水準を「所得代替率」でシミュレーションしています。


財政検証レポートに出てくる重要な指標「所得代替率」とは

所得代替率は、財政検証にかんするニュースや報道でもよく出てくる言葉ですので押さえておいた方が良いでしょう。

所得代替率とは、下記の計算式で計算されています。

上の図は、前回の財政検証レポートに載っていた所得代替率の計算式です。

分母は、現役世代の平均手取額(ボーナス込み)で、分子は、年金受給額になります。

つまり、原型世代の手取りに対して、何割くらいの年金支給額を維持できるかを国は重要な指標として捉えているという事です。

今、国は最低でも所得代替率50%以上になるように年金財政を運営しようとしています。

現役世代の手捕りの半分あれば、なんとか生活は出来るでしょうということで、1つのLINEにしていると考えられます。


所得代替率における2つの問題点

所得代替率は、1つの指標としては有効ですが問題点もあります。

1つ目は、日本の賃金水準自体が低下した状態だと所得代替率50%でも実質生活できない可能性がある。

当然ですが、年金を現役世代の平均手取りの何割貰えるかという話ですから、所得代替率が50%以上であったとしても現役世代の手捕りが低く貧しい生活をしていれば、年金では生活できない可能性は十分あります。

今日本の賃金派名目も実質も下がり傾向です。

特に、実質賃金は下がり続けています。

この様な状態では所得代替率50%という考え方では、年金の給付水準が生活できないレベルに落ちることは考えられます。

もう1つは、分子の年金受給額が税込み金額(総額)であるということです。

これは意図しているのかどうか分かりませんが、分母の現役世代の給料は手取りなのに対して、分子の年金支給額は税込の総額になっています。

つまり、所得代替率が高めに出ることになります。

年金は雑所得という立派な所得にあたりますから、所得税がかかりますし、他にも介護保険料や健康保険料など控除されます。

正確に所得代替率を出すなら、年金受給額も手取りにするべきですが、なぜか年金のほうは総額になっています。

これでは、計算上は所得代替率50%以上になっていても、実際は50%以下になってしまう可能性があります。


所得代替率についてはこちらの動画で解説しています。

財政検証2019レポートの結果を要約

財政検証では、所得代替率を指標としていますので、下記に将来の所得代替率をピックアップしています。

全ての結果を載せることは出来ませんので、ポイントだけ記載致します。

2019年は平均手取り金額は、35.7万円に対して、年金は22万円で、所得代替率は61.7%

という結果でした。1つの基準になると思います。

現役世代の手取り金額に対して、大体6割程度の年金給付水準であるということです。

それが、将来どうなるかというと下記の様になります。

ケース1で2046年に51.9%

ケース2で2046年に51.6%

ケース3で2047年に50.8%

ケース6では、2044年に50%以下になり、 2052年に積立金がなくなり完全賦課方式になる

いずれのケースでも所得大体率は低下しています。

年金給付水準は、これから数十年に渡って下がり続けることは確実です。

さらに、ケース6では2044年に積立金が枯渇します。

積立金とは、今まで貯めてきた余剰資金のことです。

完全賦課方式とは、現役世代の保険料をそのまま年金支給に当てるということです。

日本は2080年には65歳以上の割合が40%を超えると言われています。

つまり二人に一人は高齢者です。

現役世代1人当たり、1人の高齢者の生活費を全て支給するのは現実的には不可能です。

つまり、完全賦課方式では年金は維持出来ません。

なにか回避手段を講じることになります。

例えば、年金給付開始年齢の引き上げです。

僕は確実に70歳、75歳と支給開始は遅れていくと考えています。

それほど、日本の年金財政は深刻です。

とても維持できるレベルではありません。

財政検証2019レポートを簡単に解説してきましたが、日本の年金制度は今後大きく変わることが予想されます。

それぞれが、自己防衛をして将来生活に困らないためにも早めの情報収集が必要です。