「老後の生活、今の貯金だけで本当に大丈夫だろうか…」
「NISAは始めたけど、他に何かできることはないかな?」
将来への漠然とした不安から、資産形成の必要性を感じている方は多いでしょう。しかし、どんな制度を活用すればいいのか、迷ってしまいますよね。
もし、国が「個人の資産形成のために」と用意した、最強クラスの節税制度があるとしたら、知りたくありませんか?
それが、この記事で解説する「iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)」です。
この記事を読めば、iDeCoがなぜこれほど強力な制度なのか、その仕組みから具体的な節税メリット、知っておくべき注意点、そして今日からできる始め方まで、初心者の方でも完全に理解できます。
iDeCo(個人型確定拠出年金)とは?3分でわかる基本のキ
iDeCo(イデコ)とは、一言でいえば「自分で作る、もう一つの年金」制度です。
今の日本の年金制度は、将来受け取る年金額が確定している公的年金(国民年金・厚生年金)が土台となっています。iDeCoは、その土台に上乗せする形で、自分自身で掛金を拠出し、自分自身で選んだ金融商品で運用、その成果を60歳以降に受け取る私的年金制度です。
公的年金との決定的な違い:「積立方式」
私たちが毎月支払っている国民年金や厚生年金の保険料は、今の高齢者世代の年金を支払うために使われる「賦課(ふか)方式(=仕送り方式)」です。つまり、自分のために積み立てているわけではありません。
一方、iDeCoは、自分が拠出した掛金が、将来の自分のために積み立て・運用される「積立方式」です。少子高齢化が進む中でも、他世代の影響を受けずに自分自身の老後資産を準備できる、自己責任型の制度という点が最大の違いです。
【最大の魅力】iDeCoが最強と言われる「税制優遇」3つのメリット
iDeCoがこれほど推奨される理由は、他の金融商品にはない圧倒的な税制優遇にあります。資産形成の3つのタイミング「拠出時」「運用時」「受取時」すべてでメリットを受けられます。
iDeCoの3大メリット
- 拠出時:掛金が全額「所得控除」になる
- 運用時:運用で得た利益が「非課税」になる
- 受取時:受け取る時も「各種控除」が使える
メリット1:【拠出時】掛金が全額「所得控除」になり、所得税・住民税が安くなる
iDeCoの掛金は、全額が「所得控除」の対象です。これは、税金計算の元となる課税所得から、iDeCoの年間掛金分をまるごと差し引けるということ。
結果として、毎年納めるべき所得税と住民税が直接的に安くなります。これは、運用成果に関わらず、拠出しただけで得られる確実なリターンであり、iDeCo最大のメリットです。
メリット2:【運用時】通常20.315%かかる運用益が「非課税」になる
通常、投資信託などで利益(運用益)が出ると、その利益に対して20.315%の税金がかかります。しかし、iDeCoの口座内で得た利益には、この税金が一切かかりません。
非課税で得た利益をそのまま再投資に回せるため、お金がお金を生む「複利効果」を最大化でき、効率的に資産を増やせます。
メリット3:【受取時】受け取る時も大きな控除が使える
60歳以降に資産を受け取る際にも、「退職所得控除(一時金で受取る場合)」や「公的年金等控除(年金で受取る場合)」といった大きな税制優遇が用意されています。これにより、受取時の税負担を大きく軽減できます。
【シミュレーション】あなたはいくら節税できる?年収・職業別に解説
では、実際にどれくらい税金が安くなるのでしょうか。具体的なモデルケースで見てみましょう。
モデルケース:年収500万円の会社員(35歳)の場合
掛金:上限である月額23,000円(年間276,000円)を拠出
課税所得:約195万円(所得税率5%、住民税率10%と仮定)
【年間の節税額】
iDeCoの掛金276,000円が全額所得控除されるため…
- 所得税の軽減額:276,000円 × 5% = 13,800円
- 住民税の軽減額:276,000円 × 10% = 27,600円
合計:41,400円 / 年間
この節税効果が、iDeCoを続ける限り毎年続きます。30年間続けたとすると、節税額だけで約124万円にもなります。これは、やらない理由が見つからないほどの大きなメリットです。
始める前に知っておきたいiDeCoの4つの注意点(デメリット)
これほど強力な制度ですが、もちろん注意点もあります。メリット・デメリットの両方を理解した上で判断しましょう。
iDeCoはあくまで老後資金を準備するための制度です。そのため、住宅購入や教育資金など、途中でまとまったお金が必要になっても、原則として60歳になるまで引き出すことはできません。「当面使う予定のない余裕資金」で始めることが大前提です。
iDeCoでは、定期預金などの元本確保型商品も選べますが、リターンを狙う投資信託などを選んだ場合は、市場の状況によって資産価値が元本を下回る(元本割れ)リスクがあります。「長期・積立・分散」投資でリスクをコントロールすることが重要です。
iDeCoには、加入時や毎月の運用中に、金融機関に支払う手数料が発生します。節税メリットが大きいため過度に心配する必要はありませんが、金融機関によって手数料は異なるため、口座開設時にはしっかり比較検討しましょう。
前述の通り、受取時には大きな控除がありますが、退職金が多い方などが一時金で受け取ると、控除額を超えた分に課税される場合があります。受取時の「出口戦略」も考えておく必要があります。
【初心者向け】iDeCoの始め方 4ステップ
iDeCoを始めるのは、思ったより簡単です。大きく分けて4つのステップで完了します。
- STEP1:金融機関を選ぶ
iDeCoを取り扱う銀行、証券会社、信用金庫などから、口座を開設する金融機関を一つ選びます。手数料の安さや、運用したい商品のラインナップで比較するのがポイントです。 - STEP2:運用商品を選ぶ
選んだ金融機関が用意している商品ラインナップの中から、どの商品で運用するかを決めます。「定期預金」のような元本確保型から、「投資信託」のようなリスクを取ってリターンを狙うものまで様々です。 - STEP3:掛金を決める
職業や他の年金の加入状況によって上限額が異なります。無理のない範囲で、毎月の掛金額を設定しましょう。年に1回、金額の変更も可能です。 - STEP4:申し込み手続き
選んだ金融機関のウェブサイトなどから申込書類を請求し、必要事項を記入して返送します。会社員の方は、勤務先に記入してもらう書類もあります。
Q&A iDeCoのよくある質問
企業型DC(企業型確定拠出年金)に入っていてもiDeCoはできますか?
はい、多くの場合で併用が可能です。2022年の法改正により、以前よりもiDeCoに加入しやすくなりました。ただし、企業の規約によっては加入できない場合や、掛金の上限額が変わる場合がありますので、まずはお勤め先の担当部署に確認してみましょう。
NISAとはどう違う?どっちを優先すべき?
NISAもiDeCoも運用益が非課税になる優れた制度ですが、大きな違いは「資金の引き出し制限」と「所得控除の有無」です。iDeCoは60歳まで引き出せない代わりに、掛金が所得控除になるため節税効果が絶大です。一方、NISAはいつでも引き出せる自由度がありますが、所得控除はありません。
結論として、老後資金の準備が目的なら、まずは節税効果が最も高いiDeCoから始めることを強くおすすめします。その上で、余裕資金があればNISAも活用するのが理想的です。
パートや主婦(主夫)でも入れますか?
はい、加入できます。国民年金の被保険者であれば、パートやアルバイト、専業主婦(主夫)の方もiDeCoに加入して、ご自身の老後資金を準備できます。ただし、所得税・住民税を納めていない場合は、掛金の所得控除による節税メリットは受けられません。
途中で掛金を変更したり、止めたりできますか?
はい、可能です。掛金の変更は年に1回できます。また、家計が苦しくなった場合などは、掛金の拠出を一時的に停止することもできます。その場合でも、それまでに積み立てた資産の運用は継続されます。
まとめ:iDeCoは国がくれた「未来への贈り物」。賢く活用しよう
iDeCoの重要ポイントおさらい
- iDeCoは、公的年金に上乗せする「自分で作るもう一つの年金」。
- 最大のメリットは「掛金が全額所得控除」「運用益が非課税」という強力な税制優遇。
- 運用次第で元本割れのリスクや、原則60歳まで引き出せないという注意点もある。
- 老後資金作りが目的なら、NISAよりもiDeCoを優先するのが合理的。
iDeCoは、国が「自分の力で老後資産を準備する人を、税金面で最大限応援します」というメッセージを込めて作った制度です。この「未来への贈り物」を賢く活用するかどうかで、あなたの将来は大きく変わるかもしれません。
まずは第一歩として、手数料の安いネット証券などの資料をいくつか取り寄せて、比較検討から始めてみてはいかがでしょうか。
iDeCoだけでなく、NISAや不動産投資なども含めた総合的な資産形成術に興味がある方は、こちらの記事もぜひご覧ください。
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赤坂ファイナンシャル株式会社 代表取締役
元大手企業勤務、3,000人以上の相談実績と著書『地味な投資で2000万円』を持つお金のプロ。ファイナンシャルプランナー、クレジットカードアドバイザー®として、難しい金融の話を初心者向けにわかりやすく解説しています。
主な実績
著書:『自由に生きるための 地味な投資で2000万円』
メディア出演:テレビ朝日「グッド!モーニング」、週刊SPA!、現代ビジネス、プレジデントオンライン等 多数
講演実績:一部上場企業、経営者団体など