長期投資マガジン(2025年10月27日〜11月9日号)

長期投資マガジン(2025年10月27日〜11月9日号)

─ 世界の潮流を読み解き、「揺るがない資産形成」の軸をつくる ─

① 巻頭特集:「市場は“再加速”の兆し。だが焦りは禁物」

概要:
米S&P500、日経平均ともに上昇基調を維持しています。市場心理は「楽観」寄りに傾きつつありますが、バリュエーション(割高・割安)面では注意が必要な水準です。今号のテーマは「勢いの裏にある構造変化を読む」です。

マーケットサマリー(〜11/8)

AI・インフラ・エネルギーセクターが牽引し、米国のS&P500は6,800ポイント台を回復しました。日経平均も、内需・製造業の好調と円安基調に支えられ、史上初の5万円台に乗せています。

  • S&P500:6,800ポイント台回復(年初来+18%)。金利鈍化期待が追い風。
  • 日経平均:史上初の5万円台突破。政策期待と円安の三拍子で好調。ただし一部過熱感あり。
  • 為替・コモディティ:ドル円は149円台後半。為替介入への警戒から、一時的な円買い戻しも見られました。

専門コメント(FP視点)

「短期のニュースに踊らされず、“稼ぐ経済”にお金を置くことが投資家の本能です。市場が楽観に傾く今こそ、自分の投資ルール(積立額やリバランスの時期)を再確認しましょう。」

② データで見る世界市場の潮流

主要なマーケット指標の変動を定点観測します。

指標 10月27日 11月8日 変化率 コメント
S&P500 6,740 6,846 +1.6% テック主導の堅調推移
日経平均 49,500 50,911 +2.9% 政策期待と円安が支援
米10年債利回り 4.47% 4.33% インフレ懸念の一服
ドル円 151.2 149.8 為替介入警戒で円買い戻し
金(Gold) $2,355 $2,379 +1.0% 政治リスクとドル軟化で上昇
FP解説メモ:
「金利低下 × インフレ鈍化」は、株式市場にとって大きな追い風です。ただし、市場が“過度な楽観”に包まれる局面こそ、長期投資家は冷静さを取り戻すタイミングです。自分のポートフォリオのリスク許容度を再点検しましょう。

③ 特集コラム:「今こそ“ドル資産”と“円資産”のバランスを整える」

S&P500や全世界株式(オルカン)の人気により、投資初心者のポートフォリオが「米国株(ドル資産)偏重」になっているケースが散見されます。

円安が進行すると資産額は増えて見えますが、それは同時に、将来日本円で生活する私たちにとって「輸入物価高(インフレ)」のリスクを直接受けることも意味します。今こそ、“攻め”のドル資産と“守り”の円資産のバランスを再設計する時です。

図解:ポートフォリオの「危険ゾーン」

資産の通貨別バランス 円グラフ(危険ゾーンと理想のバランス例)

(左:ドル偏重 / 右:バランス型 のイメージ)

対策としては、以下のような「円資産」や「リスクヘッジ」の組み込みが挙げられます。

  • 国内株式インデックス(TOPIXや日経225)を一定割合組み入れる。
  • 米国ETFの為替リスクを抑える「為替ヘッジ付き」投資信託を活用する。
  • インフレ対策として「金(Gold)ETF」を資産の5〜10%程度保有する。

プロの視点からの助言

「“儲ける構造”より“守れる構造”を。長期運用は“攻守のバランス”が資産寿命を決めます。自分の資産全体を『円』で見た時にどうなっているか、一度棚卸ししてみましょう。」

④ 資産形成のヒント:「“買い方”より“続け方”」

テーマ:長期投資で最も難しいのは「メンタルの維持」

長期投資で最も難しいのは、銘柄選び(=買い方)ではありません。それは、市場が暴落した時に「含み損に耐え、投資を続けること(=続け方)」です。

含み損の耐性を高める心理法則

人間の脳は「1万円得する喜び」よりも「1万円損する苦痛」を2倍以上強く感じるようにできています(プロスペクト理論)。

損失回避バイアス(=損したくない病)

この心理的バイアスにより、多くの初心者は「含み損」に耐えられず、市場の底値で資産を売却してしまいます(=狼狽売り)。これが長期投資における最大の失敗です。

「含み損がある=失敗」ではなく、「含み損を抱えられない仕組み=未熟」と整理することが第一歩です。

データで実感:「S&P500」2025年の“本物の”値動き

机上の空論ではなく、今年(2025年)のS&P500の実際のチャートを見て、「長期投資家が何を経験したのか」を一緒に見ていきましょう。

S&P500指数 2025年 年初来チャート(実データ)

(S&P500指数 2025年 年初来チャート 2025/1/2~2025/11/11)

このチャートは、2025年の年初(1月2日)から昨日(11月11日)までの約10ヶ月半の動きです。一見すると、年初の「5,868ポイント」から「6,847ポイント」へと、約+16.7%も上昇しており、「なんだ、簡単じゃないか」と思うかもしれません。

しかし、長期投資家が試されたのは、「下落局面」です。

初心者が直面した「現実の“下落”」

実際には、2月につけた高値(約6,083ポイント)から、4月には一時「5,363ポイント」まで下落しました。これは、わずか2ヶ月弱で約-11.8%の下落です。

もし100万円投資していたら、一気に「88万円」まで資産が目減りしたことになります。この「含み損」の期間こそ、初心者が不安に駆られて売却(=狼狽売り)してしまう最大の壁です。

このチャートから初心者が学ぶべき「2つの事実」

この「春の下落」と「その後の回復・上昇」は、長期投資を続ける上で最も重要な教訓を示しています。

長期投資家にとっての「真実」

事実は2つあります。1つは、「市場は(短期的には)いつ下落するかわからない」ということ。そしてもう1つは、「市場は(長期的には)下落を乗り越えて成長してきた」ということです。

もし、あの4月の下落局面で「怖くなって」売ってしまったら、その後の夏から秋にかけての力強い上昇(+27%以上!)を取り逃がしていたことになります。

短期の「谷」と超長期の「成長」

先ほどの「2025年チャート」では短期的な下落(谷)を見ましたが、それだけでは「怖い」という印象で終わってしまうかもしれません。しかし、下の「超長期チャート」を見てください。これは過去30年間のS&P500の動き(対数スケール)です。

S&P500 超長期(30年)チャートと過去の暴落

長期が「短期の恐怖」を乗り越える

「ITバブル崩壊」や「リーマンショック」といった歴史的な大暴落でさえ、30年という時間軸で見れば「一時的な凹み」に過ぎないことがわかります。

私たちが短期的な含み損に耐えるべき理由は、「歴史的に見れば、市場はそれらの谷をすべて乗り越え、力強く成長してきた」という事実があるからです。

積立投資の本質

では、どうすれば「続けられる」のか? その答えが「積立投資(ドルコスト平均法)」です。

ドルコスト平均法の仕組み図(株価と購入口数)

積立投資の本質は、相場の上下を平均化する「時間分散」の力にあります。上の図のように、価格が高い時(山)は少なく、安い時(谷)は多く買うことを自動化できるため、タイミングを計る必要も、下落に怯える必要もなくなります。

(シミュレーション:毎月3万円をS&P500に20年間積立投資した場合、元本720万円が、年率7%換算で約1,500万円、年率5%でも約1,200万円になる計算です。)

「投資は“うまくやる”より“やめない”」を信条に

今週のアクション

  • 自分の証券口座にログインし、「積立設定」が止まっていないか点検する。
  • 「リバランス日」(資産配分を見直す日)を、手帳やカレンダーに「年1回(例:12月1日)」などと書き込む。

⑤ 読者の質問コーナー:FPまさとの相談室

読者の皆様から寄せられた質問にお答えします。

Q1. 最近株価が高くて買いづらいです。今から始めても遅くないですか?

A. 長期投資に「遅い」はありません。

確かに「高値掴み」は怖いですよね。しかし、20年、30年という時間軸で見れば、今日の「最高値」は明日の「最安値」かもしれません。重要なのは“時間の長さ”であり、タイミングではありません。
「買いづらい」と感じる時こそ、少額から自動で買い付ける「積立投資」が精神的な助けになります。「タイミング」ではなく「リズム」で投資するのが鉄則です。

Q2. 円安が怖くて海外ETFに手を出せません。

A. 素晴らしい着眼点です。為替リスクは考慮すべきです。

為替は短期ではプロでも読めません。対策としては、特集コラム③でも触れた通り、「為替ヘッジ付き」の投資信託を選ぶか、あるいは「国内上場のS&P500連動ETF(例:1655など)」を活用するのも一つの選択肢です。ただし、長期的には為替変動も平均化されるため、過度に恐れる必要はない、というのが一般的な見解です。

まさとFPコメント:
「“わからない”を放置せず、“小さく試す”を習慣にできる人が、一番早く上達します。投資は知識と経験の両輪です。まずは1万円からでも試してみましょう。」

⑥ 今号のまとめ

今号の重要なポイントを3行でまとめます。

  • 市場の動き: 米日とも上昇基調。だが“浮かれ相場”は慎重に。ドル円のバランスを見直す好機。
  • 投資マインド: 含み損を避けるより、“耐える技術”を磨く。積立投資は「続け方」の最強ツール。
  • 今週の行動: 積立設定の点検。リバランスの日程決め。「高値」を恐れず、リズムを崩さない。

一句でまとめるなら:

「波に乗るより、海の流れを読む。」