長期投資マガジン9月1日号

長期投資マガジン365

2025年9月1日号

【今号のテーマ】
世界が注目した経済会議で、市場に秋風?
9月相場に向けた、やさしい心構え

皆さま、こんにちは。暦の上では秋ですが、まだ暑い日が続きますね。

株式市場も、夏休み気分から一転、今後の景気の行方を占う重要なイベントがあり、少しピリッとした雰囲気になりました。

今回のマガジンでは、このイベントが私たちの投資にどう関係するのか、そしてこれからの市場とどう付き合っていけば良いのか、そのヒントを分かりやすくお届けします。


この2週間の市場を、ひとことで言うと?

8月後半の市場を一言で表すなら、「アメリカの“強気なひと言”に、世界がちょっぴり不安になった」という展開でした。

米国株は少し値を下げましたが、日本株は意外と踏ん張っています。なぜそんな違いが出たのか、見ていきましょう。

米国市場(S&P 500):トップのひと言で、楽観ムードにブレーキ

アメリカには「ジャクソンホール会議」という、世界の中央銀行トップが集まる超重要会議があります。ここで、アメリカの中央銀行(FRB)のトップであるパウエル議長がスピーチを行いました。

市場は「そろそろ利下げの話も出るかな?」と期待していましたが、議長の発言は「まだまだインフレ退治に本気出すぞ!だから、金利をすぐに下げるなんて期待しないでくれよな」という、少し強気なメッセージでした。これを専門用語で「タカ派」な発言と言います。

このひと言で、「金利が下がるのはまだ先か…」と感じた投資家たちが、少しだけ株を売る動きに繋がりました。


日本市場(日経平均):円安が「助け舟」となり、踏ん張る

一方、日本の株式市場は比較的しっかりしていました。その理由は「円安」です。

アメリカの金利が高いままだと、金利が低い日本円を売って、魅力的なドルを買う動きが続きます。すると、円の価値が下がる「円安」になります。

円安は、トヨタ自動車のように海外で車を売っている日本の会社にとっては「ボーナス」のようなもの。海外で稼いだ100ドルが、円安のおかげで1万3000円から1万4000円に増える、といった具合です。この恩恵への期待が、米国株の下落を和らげるクッションになりました。


今後の見通し:ちょっぴり苦手な「9月」をどう乗り切る?

実は、株価は過去のデータを見ると、なぜか9月に少し下がりやすいという「癖」があります。今回のタカ派発言も重なり、市場は少しだけ警戒モードに入っています。

今後、アメリカで発表される「景気の体温計」とも言える雇用統計や物価の指標に、ますます注目が集まります。


資産形成のヒント:市場の「癖」を知り、動じない心構えを持つ

投資の世界には、知っておくと心が楽になる「お作法」がいくつかあります。今回は、そんなお作法のひとつ、資産のメンテナンス術である「リバランス」と、先ほど少し触れた市場の癖「アノマリー」について、分かりやすく解説します。

あなたの資産は「具材」のバランス、崩れていませんか?

投資を始めるときの資産の組み合わせを「野菜炒め」に例えてみましょう。「お肉(株式)50%:ピーマン(債券)50%」という最高のバランスで作り始めたとします。

一年後、お肉(株式)がすごく値上がりして、お皿の中が「お肉70%:ピーマン30%」になっていたらどうでしょう?お肉好きには嬉しいですが、栄養バランスは少し偏ってしまいますよね。投資もこれと同じで、気づかないうちにリスクのバランスが崩れているのです。

「リバランス」とは、この偏った具材を元通りの美味しいバランスに混ぜ直してあげる、大切なメンテナンス作業です。

リバランスのすごいところ
リバランスは、増えすぎたお肉(値上がりした資産)を少し取り分けて、その分ピーマン(割安な資産)を買い足す作業です。つまり、自然と「高いものを売って、安いものを買う」という投資の理想的な行動ができる、とても賢いお作法なのです。


補足知識:株価の「季節性(アノマリー)」を知っておこう

株式市場には、明確な理由はないけれど、なぜか特定の時期に株価が動きやすいという不思議な「癖」があります。これを「季節性(アノマリー)」と呼びます。

S&P 500の月別平均リターン(過去20年間)のグラフ

このグラフは、過去20年間の米国株の月ごとの成績表です。ここから、こんな癖が読み取れます。

  • 秋(9月):一年で一番成績が振るわないことが多い、ちょっぴり苦手な月。「9月効果(セプテンバー・エフェクト)」として知られる有名なアノマリーです。
  • 年末(11月・12月):逆に、年末にかけてはリターンが回復・上昇しやすい傾向にあります。「年末ラリー」などと呼ばれ、歴史的に強い月です。

長期投資家としての心構え
この知識は、あくまで「心の準備」のために使います。「9月は少し相場が荒れるかもしれないな」と事前に知っておくことで、実際に下落が起きても慌てず、冷静に積立投資を続けることができるのです。天気予報のように、上手に活用しましょう。


読者の疑問に答える Q&Aコーナー

Q1. ニュースでよく聞く「タカ派」「ハト派」とは、どういう意味ですか?


A. 中央銀行のトップたちの性格を、鳥に例えた面白い言葉です。

  • 🦅 タカ派:鷹のように、鋭い目でインフレ(物価上昇)退治を最優先し、利上げなどの金融引き締め策に積極的な姿勢を指します。
  • 🕊️ ハト派:平和の象徴である鳩のように、経済成長や雇用の安定を重視し、利下げなどの金融緩和策に積極的な姿勢を指します。

FRB議長の発言が「タカ派的」と報じられた場合、市場は「利下げはまだ先になりそうだ」と解釈します。

Q2. 9月は株価が下がりやすいと聞きました。積立投資を今月だけお休みした方が良いでしょうか?


A. とても良い質問ですが、答えはハッキリと「いいえ、休まずいつも通り続けてください!」です。

積立投資のすごいところは、まさに価格が下がった時に「自動的に安くたくさん買える」点にあります。もし本当に9月の株価が下がるなら、それは絶好の「バーゲンセール」のチャンスです。ここで投資を休むのは、デパートのセール期間中に買い物に行かないような、一番もったいない行動かもしれません。

Q3. 「リバランス」をすると税金がかかると聞きました。NISA口座でも必要ですか?


A. そこに気づかれるのは素晴らしいですね!普通の証券口座(課税口座)で利益が出ている投資信託を売ると、その利益に約20%の税金がかかってしまいます。

しかし、NISA口座は、その利益がまるっと非課税になる魔法の箱です。なので、NISA口座の中であれば、税金のことを一切気にせずにリバランスができます。これはNISAの非常に大きなメリットなので、ぜひ活用して資産のメンテナンスをしてあげてください。