2026年5月号

対象期間:2026年5月3日(土)〜 5月24日(日)/市場データ最終日:5月22日(木)
CHAPTER 01

主要インデックスの値動きと背景分析

5月の3週間を一言で表すなら、「史上最高値の更新と、金利上昇による調整が交互にやってきた激動の3週間」でした。ニュースを見ていてヒヤッとした方もいるかもしれません。でも、結論から言えば大丈夫です。日経平均・S&P500・オルカンの3指数とも、期間を通じてしっかりプラスで着地しています。

日経平均株価 ── 史上最大の上げ幅を記録

📊 日経平均株価(5/1〜5/22)
期間始値(5/1 終値)59,513 円
期間終値(5/22 終値)63,339 円
期間中高値(5/11 取引時間中)63,385 円
期間中安値(5/1)59,513 円
期間騰落率+6.4%

ゴールデンウィーク明けの5月7日、日経平均はいきなりやってくれました。前営業日比+3,320円という過去最大の上げ幅を叩き出し、一気に62,833円で史上最高値を更新。この日のインパクトは凄まじく、背景には3つの大きな材料がありました。

① 米国・イラン戦闘の終結期待:4月以降、中東情勢の緊迫化で押さえつけられていた市場のムードが、両国の停戦交渉が進んでいるという報道をきっかけに一気に好転しました。

② AI・半導体関連株の爆発的な上昇:世界中でデータセンターの建設ラッシュが続いており、その恩恵を受けるキオクシア、フジクラ、村田製作所などがストップ高を含む急騰を見せました。この日の東証プライム売買代金は10兆8,448億円と、こちらも史上最大です。

③ 決算発表ピークの好業績:トヨタ、三菱UFJフィナンシャル・グループなど主要企業の決算が相次ぎ、日本企業のファンダメンタルズ(業績の基礎的な力)の強さが確認されました。

もっとも、上がりっぱなしとはいきません。5月中旬(5/15〜5/19)には日経平均は4日続落し、一時60,550円付近まで調整しました。主な原因は国内長期金利(10年債利回り)が2.8%台に上昇したこと、そして原油価格の高止まりによるインフレ懸念です。しかし5月22日に米イラン合意への期待が再び高まると、前日比+1,654円の63,339円で終値の最高値を更新。結局、しっかりと持ち直して5月を折り返しています。

📖 用語メモ
長期金利と株価の関係:長期金利が上がると、企業がお金を借りるコストが増えて利益が圧迫されるため、株価にはマイナスに働きやすくなります。ただし「景気が良いから金利が上がっている」場合は、企業の稼ぐ力がそれを上回るので、株価はむしろ上がることも。今回は原油高が引き起こしたインフレ(コストプッシュ型)が原因だったため、市場は一時的にピリッとした空気になりました。

S&P500 ── 8週連続上昇、企業決算は絶好調

📊 S&P500(5月期間データ)
5/22 終値7,473 pt
52週高値(5/14)7,517 pt
年初来騰落率約+8%
週間連騰記録8週連続上昇(2023年12月以来最長)

S&P500は5月22日時点で8週連続の上昇を達成。これは2023年12月以来の最長連騰で、年初来リターンは約+8%に達しています。積立でS&P500に投資している方にとっては、非常に心強い流れですね。

ここまで力強い上昇を支えているのは、なんと言っても企業決算の好調さです。S&P500構成企業のうち89%が第1四半期の決算を報告済みですが、そのうち84%が事前予想を上回るEPS(1株当たり利益)を叩き出しています。これは過去5年平均の78%、過去10年平均の76%を大きく上回る数字で、2021年第2四半期以来の高水準。利益の上振れ幅も予想比+18.2%と、こちらも2021年第1四半期以来のサプライズ率でした。

ただし、気にしておきたい点もあります。5月中旬には米国10年債利回りが4.56%まで上昇し、テクノロジー株を中心に逆風が吹きました。ニューヨーク連銀の消費者調査では、1年先のインフレ期待が3.6%に上がっており、ホルムズ海峡の封鎖長期化に伴う原油高がインフレ再加速への不安をじわじわ広げています。FRB(米連邦準備制度理事会)のウォラー理事が「もう緩和的な姿勢は必要ない」と示唆したこともあり、マーケットの利下げ期待はトーンダウンしている状況です。

📖 用語メモ
EPS(Earnings Per Share):企業が1株あたりいくら稼いだかを示す指標です。S&P500全体のEPSが予想を大きく上回ったということは、ざっくり言えば「米国の大企業500社が、プロのアナリストが想定した以上に稼いだ」ということ。株価の上昇が企業の実力に裏付けられていることを意味するので、長期投資家にとっては安心材料になります。

オルカン(全世界株式) ── 株高+円安のダブル追い風

📊 eMAXIS Slim 全世界株式(オルカン)基準価額
5/1 基準価額35,539 円
5/22 基準価額37,074 円
期間騰落率+4.3%
純資産総額約11兆9,681億円
💱 ドル円為替レート
5月上旬156〜157円台
5/22159.15円
方向約2〜3円の円安方向

オルカン(eMAXIS Slim 全世界株式)の基準価額は、5月1日の35,539円から5月22日には37,074円へと+4.3%上昇しました。純資産総額はいよいよ約12兆円に迫っており、名実ともに日本最大の投資信託です。毎月コツコツ積み立てている方にとっては、嬉しい伸びですね。

この期間、オルカンがしっかり伸びた背景には2つのエンジンがあります。

エンジン① 海外株式そのものの上昇:オルカンのポートフォリオの約6割を占める米国株(S&P500)が堅調に推移したのが最大の貢献です。さらに、日本株(日経平均)も過去最高値を更新しており、ポートフォリオ全体をしっかり押し上げてくれました。

エンジン② 円安(ドル高)による為替効果:ドル円は5月上旬の156円台から5月22日には159円台へと、約2〜3円の円安が進みました。オルカンは為替ヘッジなしのファンドなので、円安になると海外資産の円換算額が自動的に膨らみ、基準価額を押し上げてくれます。つまり「株高+円安」は、日本からオルカンに投資している私たちにとって最高の追い風パターンなんです。

ちなみに、なぜ円安が進んだかというと、日米の金利差が依然として大きいことが一番の理由です。加えて、4月の日本の輸出は前年比+14.8%と好調だったものの、原油高でエネルギー輸入コストがかさみ、貿易収支の改善は思ったほど進みませんでした。このあたりも円安の地合いを支えています。

📖 用語メモ
為替ヘッジなし(ノーヘッジ):オルカンは海外の株式をそのまま外貨で保有するタイプのファンドです。そのため基準価額は「株価の上下」と「為替の上下」の両方に影響されます。円安ならプラス、円高ならマイナス。ここだけ聞くと心配になるかもしれませんが、長期で見れば為替の影響は株式リターンに比べると限定的です。あまり気にしすぎず、「短期的にはそういう仕組みなんだな」くらいに捉えておけばOKです。
CHAPTER 02

資産形成を加速するレッスン
── 長期投資における「待つ力」と「相場との距離感」

5月は日経平均が1日で+3,300円上がったかと思えば、翌週には4日連続で下落して-2,700円以上を失う――そんなジェットコースターみたいな3週間でした。正直、心が揺れた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

こうした相場を毎日追いかけていると、「今のうちに売ったほうがいいのかな」「もっと買い増すべき?」と、どうしても衝動が湧いてきます。でも、ここであえてハッキリ言わせてください。資産形成を加速させる最大のエンジンは、実は「何もしない時間(=待つ力)」なんです。

長期リターンを最も削るのは「暴落そのもの」ではなく、「感情に任せた狼狽売り」と「タイミングを狙った不要な売買」だということが、数々の研究で繰り返し示されています。10年・20年という投資の時間軸で見れば、5月のあの上下動も、振り返ると「そんなこともあったな」程度の話になります。

💡 今月のマインドセット ── 3つの実践ポイント

① 市場のノイズを遮断する
5月のように決算発表やニュースが相次ぐ時期は、どうしてもメディアの見出しが刺激的になりがちです。でも、10年・20年の時間軸で見れば、数週間の下落なんて本当に小さなものです。試しに毎日の株価チェックを「週1回」に減らしてみてください。それだけでメンタルの安定感がかなり変わりますよ。

② ドルコスト平均法の「真の価値」を理解する
定期的な積立投資は、価格が下がった時にこそ「多くの口数を買える」という最大のメリットを発揮します。5月中旬の日経平均60,500円付近での積立は、月初の59,500円付近や月末の63,300円付近よりも「安く多く仕込めた回」です。下落局面こそ、資産形成を加速させる「仕込み時」なのです。

③ コア資産への信頼を持つ
オルカンやS&P500といった世界経済の成長をまるごと取り込むインデックスを「コア(中核)」に据えたら、あとは世界経済の回復力を信じて淡々と続けるだけ。これが何百もの研究が支持する、最もシンプルで最もリターンの高い戦略です。

今月の相場で不安を感じた方は、ぜひこう自問してみてください。「自分は10年後の資産を育てているのか、それとも今週の株価を当てようとしているのか?」 もし答えが前者なら、あなたの投資のやり方はそのままで大丈夫です。

CHAPTER 03

ゴールド(金)の投資価値と過去5年の値動き

ここまで株式の話が続きましたが、長期投資のポートフォリオを考えるうえで、もう一つぜひ知っておいてほしい資産があります。それがゴールド(金)です。

ゴールドの投資価値とは?

株式が「企業の成長」に投資するものだとすれば、ゴールドは「それ自体に価値がある実物資産」です。利息や配当を生まない(インカムゲインがゼロ)ので、持っているだけでは何も生まれません。でも、株式や通貨の価値が揺らぐような荒れた局面で、ポートフォリオ全体の下落をクッションのように和らげてくれるのが、金の最大の強みです。専門的には「無相関資産としての価値」と呼ばれます。

📖 用語メモ
無相関資産:株式と金は「値動きがあまり連動しない」資産同士です。株が下がっているときに金が上がる(またはその逆)ことが多いので、両方をポートフォリオに入れておくと全体の値動きがマイルドになります。これこそが分散投資の本質であり、「卵を一つのカゴに盛るな」の実践版です。

過去5年間(2021年〜2026年)の値動き

この5年間、ゴールドは歴史的な上昇劇を見せてきました。2021年に1トロイオンスあたり約1,800ドルだった金価格は、2026年5月現在約4,500ドルを超える水準。約2.5倍です。何が起きていたのか、順を追って見てみましょう。

  • 2021年
    コロナショック後の金融緩和から経済再開へ向かう中、1,700〜1,900ドルの「保ち合い(コンソリデーション)」が続いた調整期。景気回復期待で株式に資金が向かい、金は一服。
  • 2022年
    ウクライナ情勢の緊迫化で「有事の金」買いが発生。しかしFRBの急激な利上げ(0%→4.5%)によるドル高が強烈な逆風となり、価格は激しく乱高下。結局ほぼ横ばいで年末へ。
  • 2023年
    シリコンバレー銀行(SVB)破綻を契機に金融システム不安が台頭。安全資産需要が急増し、金は再び上昇トレンドに転換。年末には2,000ドルの大台に定着。
  • 2024年
    中国・インドなど新興国中央銀行の「脱ドル・金準備積み増し」が巨大な構造的買い需要を創出。2,000ドル台を突破し、年間平均2,388ドルへ。史上最高値を次々と更新。
  • 2025年
    年間で53回の史上最高値を記録。年末には4,318ドルに到達。金の年間平均価格は前年比+44%という驚異的なパフォーマンスを達成。
  • 2026年(現在)
    2月に一時5,000ドルを突破。その後、米イラン情勢の動向に左右され、5月22日時点では約4,500ドル付近で推移。ピークからは約14%の調整も、1年前比では依然として+41%の上昇。JP Morganは年末6,300ドルの予測を発表。

初心者はゴールドとどう向き合うべきか

5年で2.5倍というパフォーマンスを見ると、つい「株よりも金を買っておけばよかった…」と思ってしまいますよね。でも、ここは一歩引いて冷静に考えてみましょう。

ゴールドがこれだけ急騰したのは、パンデミック・戦争・銀行破綻・インフレ・地政学リスクといった「不安の連鎖」が背景にあります。こうした危機はいつ訪れるか、いつ終わるか、誰にも読めません。だからこそ、ゴールドの過去リターンがこの先も続くという保証はないのです。

一方で、株式(世界のインデックス)は「企業が利益を生み出す」という再現可能な構造に支えられており、長期的には最も信頼できる資産クラスであり続けています。

まとめ:長期投資の主役はあくまで株式インデックス(オルカン、S&P500)です。ゴールドは、ポートフォリオの5%〜10%程度を「サテライト(衛星)資産」として加えておくイメージ。そうすることで、世界的な危機やインフレが起きたときの「保険」として働き、資産全体の安定感がぐっと増します。

具体的な始め方としては、金ETF(例:SPDRゴールドシェアズ、純金上場信託)を証券口座で少額ずつ買い付けるのが一番手軽です。実物の金地金や金貨を買う方法もありますが、保管コストがかかる点はあらかじめ知っておきましょう。

EDITOR'S NOTE

編集後記

5月は「史上最大の上げ幅」と「4日連続の下落」が同居した、感情が揺さぶられやすい月でしたね。でも、振り返ってみてください。日経平均は+6.4%、S&P500は8週連続上昇、オルカンは+4.3%。3指数すべてがしっかりプラスで着地しています。

相場の真っただ中では「嵐」に感じた3週間も、長期チャートで見ればほんの小さな波の一つにすぎません。これからも一緒に、淡々と資産を育てていきましょう。来月号でまたお会いできるのを楽しみにしています。

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