外貨建て保険は本当に必要?メリット・デメリットと円安時代に潜むリスクをFPが解説

外貨建て保険は本当に必要?メリット・デメリットと円安時代に潜むリスクをFPが解説


「銀行預金より金利が高い」「円安の今がチャンス」そんな言葉で、保険会社の営業担当者から外貨建て保険を勧められた経験はありませんか?

円安が進み、日本の金利も低いままであることから、外貨建て保険は魅力的に映るかもしれません。しかし、その輝きの裏には、見過ごされがちなリスクや複雑な手数料が隠されています。

【FPとしての結論】

外貨建て保険は、メリット・デメリットを正しく理解し、自分の目的に合うかを見極める必要がある「中〜上級者向けの金融商品」です。特に、為替や手数料の仕組みを理解せずに加入すると、「こんなはずじゃなかった」と後悔する可能性があります。

この記事では、中立的な立場のファイナンシャルプランナーとして、外貨建て保険の真実を徹底解説します。

外貨建て保険のメリット・デメリットを徹底比較


メリット

  • 高い予定利率
    日本の円建て保険に比べて金利が高く、保険料が同じでも将来受け取れる金額が大きくなる可能性がある。
  • 通貨分散によるリスクヘッジ
    資産の一部をドルなどの外貨で持つことで、将来の円安(円の価値低下)リスクに備えることができる。

デメリット

  • 為替リスク
    保険金や解約金を受け取る時に、契約時より円高になっていると、円換算で元本割れする可能性がある。
  • 複雑で高い手数料
    為替手数料のほか、契約・維持・解約に関わる様々な手数料が引かれ、リターンを圧迫する。
  • 仕組みの複雑さ
    「金利」と「為替」という2つの変動要因が絡むため、損益の状況を把握しにくい。

【最重要】為替リスクは「両刃の剣」


外貨建て保険を考える上で、最も重要なのが「為替リスク」の正しい理解です。

円安の恩恵(為替差益)
契約時:1ドル = 120円
受取時:1ドル = 150円(円安)
→ 1万ドルを受け取ると、120万円が150万円に増える(+30万円)

円高の悪夢(為替差損)
契約時:1ドル = 120円
受取時:1ドル = 100円(円高)
→ 1万ドルを受け取ると、120万円が100万円に減る(-20万円)
※いくら高い金利で運用されても、この損失で元本割れする可能性があります。

「円安が続いているから大丈夫」と考えるのは早計です。10年後、20年後の為替レートを正確に予測することは誰にもできません。「円高になる可能性もある」という前提で検討することが鉄則です。

見えにくい「手数料」がリターンを削る


外貨建て保険のもう一つの大きな注意点が、見えにくい手数料です。パンフレットに書かれた高い利回りだけを見て判断してはいけません。

主に引かれる3つの手数料

  1. 為替手数料:円と外貨を交換するたびに発生(保険料支払時、保険金受取時など)。金融機関によってレートが異なる。
  2. 保険関係費用:契約の締結や維持管理にかかるコスト。積立金から毎年数%が引かれるのが一般的。
  3. 解約控除:早期解約した場合にかかるペナルティ。契約から10年以内などは、積立金から多額の控除が発生することが多い。

これらの手数料が積み重なることで、たとえ為替が有利に動いても、手取り額は思ったほど増えないというケースが頻発します。

契約前に必ず確認!あなたの目的は「保障」ですか?「資産運用」ですか?


外貨建て保険で後悔する人の多くは、目的が曖昧なまま「なんとなく」契約してしまっています。この保険の最大の問題点は、「万一の保障」と「将来への貯蓄・運用」という2つの機能が混ざっている点にあります。

【例え話】リンスインシャンプーや多機能ナイフ

一つで二役こなす商品は便利に聞こえますが、髪をサラサラにしたいなら専門のシャンプーとトリートメントを使った方が効果的ですし、何かを切りたいなら専門のナイフの方がよく切れます。保険も同じで、目的を一つに絞った専門の金融商品の方が、シンプルで、手数料が安く、結果的に効率が良くなることがほとんどです。

【要注意】「銀行預金よりはマシ」というセールストークの罠

「どうせ金利0%の銀行に預けておくだけなら、少しでも増える可能性がある保険の方が良いですよね?」これは、典型的なセールストークですが、ここに大きな罠があります。

この考え方は、「今すぐ使う必要のない大切なお金を、おまけ程度の保障のために、非効率で長期間ロックされる『死に金』に変えてしまう行為」と言えます。

FPが推奨する合理的な考え方は、目的を「分解」することです。

  • お金を増やしたいなら → 手数料の安いNISAなどで「長期投資」を行う。
  • 万一に備えたいなら → 保険料の安い「掛け捨ての保険」に加入する。

この2つを別々に行う方が、手数料を最小限に抑えられ、資産はより効率的に増え、必要な保障も安く確保できるため、ほぼ常に優れた結果をもたらします。

契約前に、ご自身の目的を明確に切り分けてみましょう。

もし目的が「資産運用(お金を増やすこと)」なら…

シンプルにお金を増やしたいのであれば、外貨建て保険は最適な選択肢とは言えません。なぜなら、保険機能のためのコストや様々な手数料が、あなたのリターンを確実に圧迫するからです。

同じ「外貨で運用」するなら、NISAなどを活用して手数料の安い「全世界株式」や「S&P500」といったインデックスファンドに投資する方が、はるかに効率的に資産を増やせる可能性が高いのが現実です。

もし目的が「保障(万一への備え)」なら…

「自分が万一の時に、家族に外貨で資産を残したい」という明確な目的がある場合は、検討の余地があります。しかし、その場合でも、より保険料が安い掛け捨ての死亡保険(収入保障保険や定期保険)と比較し、本当に貯蓄機能付きの保険が必要なのかを冷静に判断する必要があります。

【FPの最終結論】外貨建て保険はどんな人におすすめ?


外貨建て保険が選択肢になる人

  • すでにNISAやiDeCoなどの基本的な資産形成を実践している
  • 10年〜20年以上使う予定のない、余裕資金で取り組める。
  • 為替リスクや手数料の仕組みを自分で調べて理解できる
  • 資産全体の一部として、「円安への備え」「万一の保障」を両立させたい明確な目的がある。

安易に手を出さない方がいい人

  • 投資や資産運用が全くの初心者である。
  • 「元本保証」や「安全」という言葉に安心感を求める。
  • 目的が「保障」なのか「資産運用」なのか、自分でもはっきりしていない。

初心者が「貯蓄の代わり」や「老後資金の基本」として安易に手を出すと、思わぬ損失を被る可能性があります。まずはNISAやiDeCoといった、国が用意した手数料の安い非課税制度から始めるのが鉄則です。

▶︎ 銀行預金以外の資産運用方法について、広く知りたい方はこちらの記事もどうぞ。
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