新NISAでS&P500だけ買っている人が
知っておくべき3つの死角
米国株を捨てる必要はありません。
大切なのは、知らないうちに偏るのではなく、
自分で納得して米国比率を決めることです。
データ基準日:2026年6月30日
新NISAをきっかけに、S&P500やオルカンへの積立を始めた人は少なくありません。 低コストで幅広い企業に投資できるため、長期的な資産形成の選択肢として非常に優れています。
ただし、投資に慣れてくると、 「このまま米国株中心で本当に大丈夫だろうか」 という不安を感じることがあります。
政策の変更、金利、為替、巨大IT企業への集中、株価の割高感など、 米国株が好調だからこそ見えにくくなっているリスクもあります。
本レポートでは、S&P500を否定するのではなく、 米国株を持ちながら地域分散を取り入れる考え方を、 投資初心者にもわかる言葉で解説します。
銘柄数の分散と、国・地域の分散は別の話です。
全世界株式は各国へ均等に投資する商品ではありません。
積立先を少しずつ変えるだけでも偏りを調整できます。
S&P500とオルカンは何が違うのか
まず、S&P500とオルカンの違いを整理しておきましょう。
| 比較項目 | S&P500 |
全世界株式 MSCI ACWI型 |
|---|---|---|
| 主な投資対象 | 米国の代表的な大型企業 | 先進国・新興国の大型・中型企業 |
| 構成銘柄数 | 約500社 | 約2,460社 |
| 米国比率 | 100% | 約63.6% |
| 上位10銘柄の比率 | 約36.4% | 約23.3% |
| 主な特徴 | 米国の成長を強く取り込める一方、 国と大型企業への集中度が高い | 世界全体へ分散できるが、 時価総額が大きい米国の影響は依然として大きい |
※構成比率は2026年6月30日時点。 指数の値動きや定期的な組み替えにより変動します。
オルカンは世界中の企業へ投資できますが、 各国へ均等に投資しているわけではありません。 株式市場の規模が大きい国ほど比率が高くなる 「時価総額加重」という仕組みが基本です。
そのため、オルカンだけを保有している場合でも、 資産の約3分の2は米国株という状態になります。
S&P500は「米国株100%」、 オルカンは「米国株を中心とした全世界株式」です。 オルカンを持っていれば米国依存がなくなる、 というわけではありません。
S&P500だけを買う人が知っておくべき3つの死角
500社に分散していても「一つの国」への集中は残る
S&P500には、IT、金融、医療、生活必需品、 エネルギーなど、幅広い業種の企業が含まれています。
その意味では、1社や数社だけに投資するよりも十分に分散されています。 しかし、すべて米国企業であることに変わりはありません。
米国の政策、税制、金利、企業規制、会計制度、 株式市場の評価が変化すれば、 多くの構成企業が同時に影響を受ける可能性があります。
500社に投資していても、 投資金額の3分の1以上が上位10社に集中しています。 つまり現在のS&P500は、 米国への集中に加えて、巨大企業への集中も強い指数 です。
分散を判断するときは、銘柄数だけでなく、 国、業種、企業規模、通貨の偏りまで確認する必要があります。
好調だった市場ほど、価格が高くなっている可能性がある
米国企業には、世界を代表する高収益企業が数多く存在します。 米国株の評価が高いことには、それなりの理由があります。
一方で、良い企業であっても、 期待が株価に織り込まれすぎていれば、 将来の利益成長が期待を下回ったときに 株価が大きく調整することがあります。
| 地域 | 代表指数 | PER | 予想PER |
|---|---|---|---|
| 米国 | MSCI USA | 27.63倍 | 21.02倍 |
| 欧州 | MSCI Europe | 18.04倍 | 15.00倍 |
| 日本 | MSCI Japan | 21.27倍 | 16.91倍 |
| 新興国 | MSCI Emerging Markets | 18.61倍 | 11.65倍 |
※2026年6月30日時点。 PERが低ければ必ず上昇するわけではなく、 業種構成や成長率、政治・通貨リスクなども異なります。
現在の米国株は、欧州、日本、新興国と比べて 高い評価を受けています。 これは米国株が直ちに下落するという意味ではありません。
ただし、現在の株価には 「米国企業は今後も高い成長を続ける」 という期待が相当程度含まれていると考える必要があります。
一つの地域の期待が外れたときに、 資産全体が同じ方向へ傾きすぎないようにすること が本来の目的です。
日本で使うお金なのに、資産がドルの影響を強く受ける
日本の投資信託を通じてS&P500を買っている場合でも、 投資先の株式は米ドルで取引されています。
そのため、日本円で見た運用成績は、 米国株の値動きだけでなく、 円とドルの為替にも左右されます。
例:米国株が10%上昇しても、円高が進んだ場合
米国株が10%上昇しても、 その間にドルが円に対して15%下落した場合、 円換算した資産は約6.5%減少します。
反対に円安が進めば、 米国株の上昇以上に円換算額が増えることもあります。 近年の米国株投資では、 株価の上昇に加えて円安が利益を押し上げた局面もありました。
将来、円高方向へ動いた場合には、 同じ効果が逆向きに働く可能性があります。
地域分散とは「次に上がる国を当てること」ではない
地域分散というと、 「これから米国より日本が上がる」 「次は欧州株の時代だ」 といった予想をすることだと思われがちです。
しかし、本来の地域分散は相場予想ではありません。
米国が今後も世界経済をリードする可能性は十分にあります。 一方で、今後20年、30年という長い期間にわたり、 米国が常に最も高い成績を残すと断定することはできません。
欧州、日本、新興国が成長する局面や、 米国以外の企業の評価が見直される局面も考えられます。
地域分散をしても、 株式市場全体が下落するときには資産が減少します。 地域分散は「株式の中にある国の偏り」を抑える方法であり、 株価下落そのものを完全に防ぐ方法ではありません。
資産全体の値下がりをさらに抑えたい場合は、 株式の地域分散だけでなく、現金、債券、金などを組み合わせる 資産分散も必要になります。
初心者向け・地域分散ポートフォリオ3例
ここからは、地域分散を取り入れる具体例を紹介します。
ただし、以下は特定の商品を推奨するものではなく、 地域配分の考え方を理解するための参考例です。 すべて株式100%であるため、 短期間では大きく値下がりする可能性があります。
プランA:オルカンを100%保有する
世界の株式市場の規模に合わせて、 自動的に地域配分を変えていく方法です。 自分で各地域の将来を予想したくない人に向いています。
向いている人: シンプルさを優先し、 世界市場の変化に任せたい人。
注意点: 全世界株式ではありますが、 現時点では米国比率が約64%あります。
プランB:オルカン70%+米国を除く全世界株式30%
オルカンを中心にしながら、 米国以外の地域を追加する方法です。 オルカンの米国比率を約63.6%として計算すると、 ポートフォリオ全体の米国比率は約44.5%になります。
実質的な地域比率の目安:
米国約44.5%、米国以外約55.5%
向いている人: オルカンの仕組みを活用しながら、 米国依存を少し抑えたい人。
プランC:米国50%+米国以外の先進国30%+新興国20%
地域ごとの比率を自分で決める方法です。 米国を中心に置きながら、 欧州、日本、カナダ、アジア、新興国などへ意識的に分散します。
向いている人: 自分の考えで米国比率を決め、 年1回程度の調整を続けられる人。
注意点: 新興国株は値動きが大きく、 政治、規制、通貨などのリスクもあります。 比率を増やせば安全になるわけではありません。
重要なのは、最近上がった地域を追いかけるのではなく、 自分が長期間維持できる比率を先に決めることです。
すでにS&P500を買っている人はどうすればよいか
地域分散を始めるために、 現在保有しているS&P500を すべて売却する必要はありません。
特に長期投資では、 相場への不安だけを理由に保有商品をすべて入れ替えると、 その後の上昇を逃したり、 判断を何度も変えたりする原因になります。
-
現在の米国比率を確認する
S&P500、NASDAQ100、オルカンなど、 保有商品の中に米国株が何%含まれているかを確認します。 -
目標とする米国比率を決める
100%のままにするのか、 70%、50%程度まで下げるのかを決めます。 -
まずは今後の積立先を変更する
現在の保有分を売却せず、 新しい積立を米国以外へ向ける方法があります。 -
年1回程度だけ比率を確認する
毎日の値動きではなく、 一定期間ごとに目標配分との差を確認します。 -
大きくずれた場合のみ調整する
新しい積立金を比率の低い地域へ回すことで、 売却せずに調整できます。
売却せずに地域分散する例
| 時点 | S&P500 | 米国以外 | 米国比率 |
|---|---|---|---|
| 現在 | 300万円 | 0万円 | 100% |
| 今後3年間 | 新規積立なし | 毎年100万円を積立 | 徐々に低下 |
| 3年後 | 300万円 | 300万円 | 約50% |
※値動きを考慮しない単純な例です。 実際の比率は運用成績によって変化します。
この方法なら、一度に売買することなく、 時間をかけて米国への集中を緩和できます。
地域分散でよくある4つの誤解
海外売上が多いことは事業の分散にはなりますが、 上場市場、株価評価、通貨、制度、金融政策は 米国の影響を強く受けます。 海外売上と投資先地域の分散は同じではありません。
均等ではありません。 市場規模の大きい国ほど比率が高くなるため、 現在は米国が約64%を占めています。
必ず下がるわけではありません。 日本株も株式であるため、 世界的な株安では同時に下落する可能性があります。 国の偏りは抑えられますが、 株式全体のリスクは残ります。
上がっていない地域が必ず反発するとは限りません。 地域分散は値上がりする国を当てる戦略ではなく、 予想が外れた場合の影響を抑えるための戦略です。
自分のポートフォリオを確認するチェックリスト
- S&P500とオルカンの米国比率の違いを説明できる
- 自分の投資資産に占める米国株の割合を把握している
- 円高になった場合の影響を理解している
- 米国株が数年間低迷しても積立を続けられる
- 目標とする地域配分を数字で決めている
- 相場ニュースのたびに配分を変更していない
- 生活防衛資金と投資資金を分けている
- 5年以内に使う予定のお金を株式へ集中させていない
当てはまらない項目が多い場合は、 新しい商品を買う前に、 現在の資産配分と投資目的を整理することが先です。
まとめ
S&P500は、 米国を代表する優良企業へ低コストで投資できる、 長期投資の有力な選択肢です。
したがって、今後の不安だけを理由に S&P500をすべて手放す必要はありません。
ただし、S&P500だけを保有するということは、 投資先の国を米国一つに決めること でもあります。
オルカンも米国比率は約64%あるため、 全世界株式を買っているだけで 米国依存が完全になくなるわけではありません。
地域分散で大切なのは、 次に上がる国を予想することではなく、 どの国が好調になっても、 その成長を一定程度取り込める状態をつくること です。
米国株を買うか、買わないかという二択ではありません。 自分の資産のうち米国を何%にするのか。 その比率を意識的に決めることが、 長期投資の次の一歩になります。
本レポートは、一般的な金融・投資教育を目的として作成したものであり、 特定の金融商品、銘柄、投資手法の勧誘・推奨を目的とするものではありません。 掲載したポートフォリオは考え方を説明するための参考例であり、 将来の運用成果を保証するものではありません。 投資商品には価格変動、為替変動、信用、流動性、 制度変更などのリスクがあり、元本割れが生じる可能性があります。 実際の投資判断は、ご自身の資産状況、収入、投資期間、 リスク許容度などを踏まえて行ってください。
主な参考資料
- 金融庁「NISAを知る」 金融庁公式サイト
- S&P Dow Jones Indices「S&P 500」 指数情報
- MSCI「MSCI ACWI with USA Index Factsheet」 2026年6月末ファクトシート
- MSCI「MSCI USA Index」 指数情報
- MSCI「MSCI Europe Index」 指数情報
- MSCI「MSCI Japan Index」 指数ファクトシート
- MSCI「MSCI Emerging Markets Index」 指数ファクトシート
※指数構成、地域比率、PER等は時間の経過とともに変動します。 掲載数値は原則として2026年6月30日時点です。