まずは、今号のポイントから
- 直近2週間のS&P500は約−1.1%、日経平均は約+0.6%。このくらいの動きなら、長期投資では誤差と考えて大丈夫です。
- 投資アプリは、毎日見なくても問題ありません。むしろ月1回くらいのほうが、余計な売買を減らせます。
- 高配当株は、利回りの高さだけで決めないこと。「増配・現金・利益」の3つを見ていきます。
- 初心者の方は、広く分散した投資を土台にして、高配当株は一部に加える形が分かりやすいでしょう。
01市場分析|この程度の動きなら誤差です
さて、まずはこの2週間のマーケットから見ていきましょう。
S&P500は少し下がり、日経平均は少し上がりました。米国株と日本株で方向は分かれましたが、結論から言うと、投資方針を変える必要はありません。どちらも長期投資の前提が変わるほどの動きではない、と私は見ています。
| 指数 | 8月7日終値 | 8月21日終値 | 値幅 | 騰落率 |
|---|---|---|---|---|
| S&P500 | 7,757.64 | 7,674.37 | −83.27 | −1.1% |
| 日経平均 | 65,606.71円 | 66,016.36円 | +409.65円 | +0.6% |
※直近2週間は、比較可能な金曜日終値(8月7日→8月21日)で計算。小数第2位を四捨五入。S&P500は指数値、日経平均は円表示です。
切り取る期間で、見え方はこんなに変わる
ここが少し面白いところです。今号の対象期間全体を、直前の取引日である7月31日から8月21日までで見ると、S&P500は+2.5%、日経平均は+2.6%でした。
ところが、直近2週間だけを切り取るとS&P500はマイナスになります。同じ相場なのに、「上がった」とも「下がった」とも言えるわけですね。
ニュースを見ていると、強気になったり不安になったりすることがあります。でも、それは切り取る期間の違いに反応しているだけかもしれません。短期のニュースを、そのまま売買の理由にする必要はないということです。
株価は「犬」、企業価値は「飼い主」
株価の動きを分かりやすく考えるなら、「犬の散歩」をイメージしてみてください。
散歩中の犬は、急に先へ走ったかと思えば、何かを見つけて後ろへ戻ることもありますよね。ただ、リードで飼い主とつながっているので、長い目で見れば同じ方向へ進んでいきます。
株価もこれとよく似ています。犬が株価で、飼い主が企業価値です。
今回の米国株は、長期金利の上昇や中東情勢への不安で少し揺れました。ただ、アメリカの企業活動はまだ底堅く、企業利益の見通しまで大きく崩れたわけではありません。
日本株も、急上昇した後に「そろそろ利益を確定しておこう」という売りが出ました。それでも、日本企業の業績が改善しているという土台まで消えたわけではない。この辺りは、分けて考える必要があります。
要するに、この2週間の−1.1%や+0.6%は、長期投資では誤差です。犬が少し前へ行ったり、後ろへ戻ったりしただけ。飼い主が進む方向まで変わったわけではありません。
ですから、今のところ積立を止めたり、慌てて売ったり、保有銘柄を大きく入れ替えたりする必要はないでしょう。いつも通りで大丈夫です。
02資産形成のヒント|投資アプリ、毎日見なくて大丈夫です
さて、ここで今月の資産形成のヒントです。今回のテーマは、「投資アプリを見すぎないこと」。
株価が気になって、つい何度もアプリを開いてしまう。その気持ちはよく分かります。特に投資を始めたばかりの頃は、増えたか減ったか確認したくなりますよね。
ただ、長期投資であれば毎日見る必要はありません。むしろ情報を増やすより、余計な判断を減らすほうが、結果的にうまくいきやすいと私は考えています。
見る回数が増えるほど「何かしたくなる」
株価は毎日動きます。アプリを開くたびに損益が赤や青で表示されると、「一度売ったほうがいいのかな」「もっと上がる前に買わないと」と、何か行動したくなるものです。
でも、その気持ちの多くは、企業の中身が変わったからではありません。画面上の数字が動いたことに反応しているだけです。
そもそも、長期投資で本当に必要な判断が毎日発生することは、ほとんどありません。ここは少し距離を置いたほうが良いところですね。
そこでおすすめしたい「月1回ルール」
- まずはアプリをホーム画面から外してみる。
削除まではしなくて大丈夫です。何となく開いてしまわない場所へ移すだけでも違います。 - 確認する日を先に決めてしまう。
例えば「毎月第1土曜日」と決めておけば、気分ではなく予定で確認できます。 - 見るものは3つだけ。
「積立が実行されたか」「預金が不足していないか」「資産配分が大きく崩れていないか」。基本的にはこれで十分です。 - ニュースを見て売買したくなったら、一度止まる。
見直すのは、収入・生活費・お金を使う時期・投資の目的が変わったときです。
まずは次に確認する日をカレンダーへ入れて、その日まではアプリを見ない。今月はこれだけ試してみてください。
「何もしない」というのは、放置することではありません。自分で決めた運用を守る、立派な行動です。
03特集|高配当株は「果樹園」で考えると分かりやすい
さて、今回の特集は高配当株投資です。
定期的に配当金が入ってくるのは、やはり魅力的ですよね。株価が上がるのを待つだけではなく、実際にお金を受け取れるので、投資の成果も感じやすくなります。
ただし、配当利回りの高さだけで銘柄を決めるのは避けたいところです。大切なのは、今年たくさん実がなる木ではなく、来年も再来年も実をつけられる果樹園かどうか。この視点です。
配当は果実、利益は土、現金は水
果樹園が毎年しっかり実をつけるには、良い土と十分な水が必要ですよね。企業も同じです。配当という果実を出し続けるには、利益という土と、現金という水が欠かせません。
今年の収穫だけを増やそうとして木を弱らせてしまえば、翌年は実がならなくなります。企業も無理をして配当を出し続ければ、成長に使うお金が減り、いずれ減配する可能性が高くなるというわけです。
良い果樹園を見分ける3つの基準
1.増配
配当が長い目で増えているかを見ます。1年だけ多い会社より、5年・10年と少しずつ増やしてきた会社のほうが安心感があります。
2.現金
本業でしっかり現金を生み出せているか。借金に頼って配当を出していないか。現金に余裕がある会社ほど、不況にも耐えやすくなります。
3.利益
利益が安定しているかも大切です。稼いだ利益のほとんどを配当に回している会社は、少し業績が悪くなっただけでも減配しやすくなります。
ここは、初心者の方が特に勘違いしやすいポイントです。
配当利回りは「1株あたりの配当 ÷ 株価」で計算します。そのため、業績が悪くなって株価が急落しただけでも、数字上の利回りは高くなります。
つまり、利回りが高いから安全なのではなく、何か問題があるために株価が下がり、利回りだけが高く見えている場合もあるということです。「高ければ高いほど良い」とは考えないようにしましょう。
個別株選びが難しいなら、ETFからで大丈夫
「増配・現金・利益を見ると言われても、会社ごとに調べるのは難しい」と感じる方も多いでしょう。それが普通です。
決算書を継続して確認するのが難しいなら、複数の会社へまとめて投資できるETFから始めるほうが分かりやすいと思います。初心者の方が検討しやすい候補として、次の2本があります。
Vanguard High Dividend Yield ETF
米国の高配当企業へ広く分散するETFです。1社の減配が全体に与える影響を小さくできます。
- 良い点:多くの企業に分散しやすい
- 良い点:低コストで長期保有しやすい
- 注意点:円高になると円換算の資産価値が下がる
- 注意点:分配金には米国課税も関係する
NF・日経高配当50 ETF
日経平均の構成銘柄から、予想配当利回りの高い原則50社へ投資するETFです。分配金は年4回です。
- 良い点:円で売買でき、最低1口から買える
- 良い点:NISAの成長投資枠に対応
- 注意点:日本だけに投資先が偏る
- 注意点:高配当になりやすい業種へ偏ることがある
ETFを選べば、それですべて安心?
ここで、「ETFなら自分で銘柄を見なくても大丈夫なのでは?」と思われるかもしれません。
確かにETFは、1社だけを選んで失敗するリスクを小さくしてくれます。ただし、高配当株ならではの業種の偏りや、減配のリスクまでなくなるわけではありません。どのような基準で銘柄を選んでいるETFなのかは、ざっくりでも確認しておきたいところです。
それから、VYMと1489は、どちらが上という関係ではありません。米国企業へ幅広く投資し、為替の動きも受け入れるならVYM。日本円で、日本企業を中心に投資したいなら1489。自分が分かりやすいと感じるほうを選べば良いでしょう。
04読者のQ&A
ご質問ありがとうございます。株価が高いところまで上がっていると、「今から始めて、すぐ下がったらどうしよう」と不安になりますよね。そのお気持ちはよく分かります。
結論から言うと、10年以上先まで使わないお金で積み立てるのであれば、今から始めて問題ありません。
そもそも、本当に今が最高値なのかは、後になって振り返らなければ分かりません。下がるのを待っている間に、さらに上がってしまうこともあります。
積立であれば、株価が高い月は少なく買い、安い月は多く買うことになります。始める日の当たり外れを小さくできるので、「今は高そうだから」と考えすぎなくても大丈夫です。
ただし、生活費まで投資に回すのはやめておきましょう。まずは生活費6か月〜1年分ほどの預金と、近いうちに使う予定のお金を残しておく。この順番が大切です。
高配当ETFから分配金が入ってくると、「これだけで老後資金を作れたら分かりやすい」と感じますよね。
ただ、資産形成中の初心者の方が、高配当ETFだけに絞る必要はありません。
高配当株は現金収入が見えやすい反面、成長企業が少なくなったり、銀行や商社など特定の業種へ偏ったりすることがあります。まずは全世界株やS&P500など、幅広い会社へ分散した投資を中心に置くのが基本です。
例えば、広く分散した投資を80%、高配当ETFを20%という形から考えると整理しやすいでしょう。もちろん、これは誰にでも当てはまる正解ではありません。
大切なのは、「まず土台を作り、高配当ETFは楽しみや現金収入を加えるものとして使う」という考え方です。