長期投資トレーニング講座 第2回

リスク許容度を見極め、
「攻め」と「守り」の割合を決める

どの商品を買うかを考える前に、自分はいくらまでの損失なら運用を続けられるのかを明確にします。

今回のゴール

投資に回す金額を確認し、その資産が暴落時に何円減る可能性があるかを理解したうえで、自分が継続できる「攻める資産」と「守る資産」の割合を決定します。

01

投資可能額を確認する

02

耐えられる損失額を決める

03

攻め・守りの比率を決める

1.ポートフォリオは商品選びから始めない

投資を始めるとき、多くの人は最初に「どの商品を買えばよいか」を考えます。しかし、商品を先に選ぶと、自分がどの程度のリスクを取っているのか分からないまま運用を始めることになります。

本来は、次の順番で考える必要があります。

投資に回せる金額
耐えられる損失額
攻め・守りの割合
具体的な商品

第2回では「攻め・守りの割合」まで決めます。日本株・外国株・債券・金などの具体的なアセットクラスは、第3回で決めます。

2.長期投資で最も大きな失敗とは

長期投資では、一時的な値下がりそのものが最大の失敗とは限りません。より大きな問題は、想定以上の値下がりに耐えられず、途中で運用方針を変更してしまうことです。

  • 暴落後にすべて売却する
  • 怖くなって積立を中止する
  • 値下がりしていない商品へ乗り換える
  • 相場が回復してから買い直そうとする
  • 短期的な予測で資産配分を変え続ける

このような行動を避けるためには、最初から高いリターンを狙うのではなく、暴落しても継続できる範囲にリスクを抑える必要があります。

良いポートフォリオとは、最も増えるポートフォリオではなく、
暴落しても続けられるポートフォリオです。

3.リスクを「値動き」ではなく「継続できなくなる可能性」と考える

投資の世界では、価格の振れ幅をリスクと呼びます。しかし、長期投資を実行する人にとって重要なのは、値動きの大きさだけではありません。

実践上のリスク

資産価格が想定以上に変動し、生活や感情に影響が出て、当初の運用計画を継続できなくなること。

同じ30%の下落でも、100万円を運用している人と1,000万円を運用している人では、実際の損失額が違います。そのため、リスクは割合だけでなく、必ず金額で確認します。

4.リスクを決める3つの視点

自分に適したリスクを考えるときは、次の3つを分けます。

視点 意味 確認する問い
リスク負担能力 経済的にどこまで損失に耐えられるか 値下がりしても生活や将来計画に影響しないか
リスク許容度 感情的・行動的にどこまで耐えられるか 大きな含み損でも売却せずに続けられるか
必要リターン 老後計画を実現するために必要な収益率 第1回の計画では、どの程度の実質リターンを想定したか

最終的なリスクは「低いほう」に合わせる

経済的には300万円の損失に耐えられても、感情的には200万円が限界なら、採用する最大許容損失額は200万円です。

採用する最大許容損失額

経済的な上限と感情的な上限のうち、低い金額

必要リターンを得るために、それ以上のリスクを取ることはしません。必要リターンと許容できるリスクが一致しない場合は、ポートフォリオではなく老後計画を修正します。

5.経済的にどこまで損失に耐えられるか

リスク負担能力は、性格ではなく家計や資金の状況によって決まります。主に次の点を確認します。

運用期間

資産を使うまでに十分な期間があるか。

生活防衛資金

失業や病気が起きても、投資資産を売らずに済むか。

近い将来の支出

住宅・教育・車など、数年以内に使うお金が含まれていないか。

収入の安定性

相場下落と同時に収入が減っても生活できるか。

判断基準

資産が一時的に減っても、生活や老後計画を変更せず、回復を待てる金額はいくらか。

6.感情的・行動的にどこまで耐えられるか

経済的には問題がなくても、含み損が大きくなると売却したくなる人もいます。感情的なリスク許容度は、次のような具体的な状況で考えます。

想像してください

1,000万円で運用を始めた半年後に、資産が700万円になりました。ニュースでは「さらに下落する可能性がある」と報道されています。元の金額へ戻るまで3年以上かかるかもしれません。

このとき、自分が取りそうな行動を考えます。

  • 保有を続けられるか
  • 積立を継続できるか
  • 積立を一時停止したくなるか
  • 一部または全部を売却したくなるか
  • 仕事や睡眠に影響が出るほど不安になるか

投資経験がある人は、想像上の回答よりも過去の行動を重視します。過去の下落時に売却・積立停止・頻繁な確認をしたのであれば、今回も同じ行動を取る可能性があります。

7.リスクは割合ではなく「円」で確認する

「30%下落に耐えられる」と考えていても、実際の損失額を見ると判断が変わることがあります。

投資金額 20%下落 30%下落 40%下落
500万円 100万円 150万円 200万円
1,000万円 200万円 300万円 400万円
2,000万円 400万円 600万円 800万円

「30%なら大丈夫」ではなく、「300万円減っても続けられるか」と考えます。

8.資産を「攻め」と「守り」に分ける

第2回では、具体的な商品やアセットクラスを決める前に、資産を大きく2つに分けます。

攻める資産

長期的な成長を期待できる一方、短期的には大きく値下がりする可能性がある資産。

守る資産

ポートフォリオ全体の値動きを抑え、暴落時の損失を小さくするための資産。

割合を比較するための共通ストレス条件として、今回は次の単純な前提を使います。

トレーニング用の共通条件

攻める資産:50%下落 / 守る資産:値動きなし

※これは将来の下落率を予測するものではありません。自分が取れるリスクを比較するための共通テストです。守る資産の具体的な内容とリスクは、第3回で確認します。

9.攻め・守りの割合で損失額はどう変わるか

投資可能額が1,000万円の場合、攻める資産が50%下落すると仮定すると、次のようになります。

攻め/守り 攻める資産 想定下落率 想定損失額
100/0 1,000万円 50% 500万円
80/20 800万円 40% 400万円
60/40 600万円 30% 300万円
40/60 400万円 20% 200万円
20/80 200万円 10% 100万円

攻める割合が大きいほど期待できるリターンも高くなりますが、暴落時の損失額も大きくなります。重要なのは、どの割合が最も増えるかではなく、どの損失額までなら運用を続けられるかです。

10.許容損失額から攻める割合を逆算する

攻め・守りの割合を感覚だけで決めるのではなく、自分が許容できる損失額から逆算します。

計算式

攻める資産の上限額 = 最大許容損失額 ÷ 50%

計算例

  • 投資可能額:1,000万円
  • 経済的に耐えられる損失:300万円
  • 感情的に耐えられる損失:200万円
  • 採用する最大許容損失:200万円

200万円 ÷ 50% = 400万円

攻める資産の上限は400万円。投資可能額1,000万円に対して攻め40%・守り60%が目安になります。

ここで決める割合は、「将来最も利益が出そうな割合」ではありません。「暴落しても運用を継続できる割合」です。

11.第1回の老後計画と矛盾していないか

第1回では、老後資金シミュレーターを使い、一定の実質リターンを前提に将来を試算しました。第2回で決めた攻め・守りの割合が、その前提と大きく矛盾していないかを確認します。

例:想定リターンが高すぎる

老後試算では高い実質リターンを使っているのに、攻め20%・守り80%を選んでいる。

例:リスクを取りすぎている

必要リターンに合わせて攻め80%にしたが、400万円の損失には耐えられない。

両者が一致しない場合、必要リターンを得るために無理にリスクを増やすのではなく、次の条件を見直します。

  • 毎月の積立額を増やす
  • 退職予定年齢を遅らせる
  • 年金受給開始年齢を見直す
  • 老後の生活費を見直す

必要リターンに合わせて無理なリスクを取るのではなく、
継続できるリスクに合わせて老後計画も調整します。

12.よくある間違い

間違った考え方 正しい考え方
年齢が若いから、攻め100%でよい 運用期間だけでなく、金額・家計・感情も確認する
長期投資だから、どれだけ下がっても問題ない 下落に耐えられず売却すれば、長期投資を続けられない
高いリターンが必要だから、攻める割合を増やす 許容範囲を超えるなら、積立額や退職年齢を見直す
自分は下落に強い性格だと思う 実際の損失額と、過去の行動を基準に判断する
相場を見てから割合を変えればよい 相場が動く前に、継続できる割合を決めておく

今回のまとめ

  1. 具体的な商品を選ぶ前に、取ってよいリスクを決める
  2. リスクは割合ではなく、実際の損失額で確認する
  3. 経済的な上限と感情的な上限のうち、低いほうを採用する
  4. 許容損失額から、攻める資産の上限を逆算する
  5. 必要リターンと一致しなければ、無理にリスクを増やさず老後計画を見直す

ここから、自分の数字を使ったトレーニングへ進みます

投資可能額と最大許容損失額を確認し、自分が継続できる「攻め○%・守り○%」を決定します。