はじめに:株式投資を「自分ごと」に変える旅
「株式投資」と聞くと、多くの人が自分とは無関係な専門家の世界だと感じます。しかし、本質はシンプル。「あなたが愛用する製品やサービスを提供している会社のオーナーの一員になり、その成長を応援すること」です。
この講座は、単に株の知識を学ぶだけではありません。あなたの視点を「消費者」から「オーナー」へと変え、経済や社会との関わり方をより深く、面白くするための「一生モノの哲学」を手に入れる旅です。
株とは、企業の「所有権を証明する証書」です。株主になることは、その会社の未来に貢献し、成長の果実を分かち合う権利を得ることを意味します。
株価はランダムに動いているわけではありません。長期的な株価は、非常にシンプルな公式で決まります。
【株価 = 一株当たり利益(EPS) × PER】
「一株当たり利益(EPS)」とは、会社の「稼ぐ力」そのものです。そして「PER」は、その稼ぐ力に対する市場の「期待度」です。つまり、長期的に株価を上げるには、会社が「①きちんと稼ぎ続けること」、そして「②世の中から期待され続けること」の2つが不可欠なのです。この本質を知るだけで、目先の株価変動に惑わされなくなります。
では、どうやって応援すべき会社を見つけるのか?プロは難しい分析をしますが、初心者はもっと簡単で、もっと確実な方法があります。
投資の神様ウォーレン・バフェットの教えは「自分が理解できる事業に投資せよ」。これは、あなたの日常生活の中にこそ、投資のヒントがあるということです。
このように、自分の「好き」や「便利」という感情は、その会社が優れた製品やサービスを提供している何よりの証拠です。
「好き」な会社を見つけたら、次の4つのフィルターにかけて、応援する価値があるかを確認しましょう。
この「宝探しの技術」は、顧客に宿題としてやってもらうのが効果的です。
「素晴らしいですね!では次に会う時までに、〇〇さん(顧客)が『好きだな』『応援したいな』と感じる会社を3つほど、日常生活の中から探してきてみませんか?そして、その会社のどんなところが好きか、ぜひ教えてください。そこから一緒に、宝探しの冒険を始めましょう。」
このプロセスを通じて、顧客は株式投資を「自分ごと」として捉え始め、主体的に学び始めます。
株式投資の楽しさとリスクを正しく伝え、顧客の資産全体を守りながら、夢のある挑戦をサポートするのが先生の腕の見せ所です。
個別株投資を顧客に許可する前に、必ずこの戦略を理解・実践してもらいます。
「資産運用を太陽系に例えましょう。中心でどっしりと構える太陽、これが『コア』です。資産の80~90%を、全世界株式などのインデックスファンドで固め、絶対に揺るがない土台を作ります。そして、その周りを回る惑星が『サテライト』。残りの10~20%の資産で、あなたが応援したい個別株や、夢のあるテーマに投資します。この戦略なら、たとえ惑星の一つがなくなったとしても、太陽系全体はビクともしません。安心して冒険に出かけるための、絶対的な安全装置です。」
現代の投資家が最も陥りやすい罠が、SNSで話題の「急騰株」への飛びつきです。これには予防接種が必要です。
「SNSで話題の株って、気になりますよね。ただ、そこで一度立ち止まって考えるのが、賢い投資家です。『この盛り上がりは、会社の本当の実力に基づいているのか?それとも、一時的なお祭りのようなものか?』と。私たちが先ほど学んだ『4つの魔法のフィルター』にかけて、この会社が長期的に応援する価値のある企業か、冷静にチェックしてみましょう。一時の熱狂に流されず、自分の判断基準を持つことが大切です。」
株の出口戦略は、買う時以上に重要です。感情を排したルールを先に決めさせます。
まとめ:株式投資は、世界を学ぶ最高の教科書
個別株投資は、単なる資産運用ではありません。それは、自分が応援する企業を通じて、経済の仕組み、技術の進化、そして社会の変化を肌で感じる、最高の教養であり、終わりのない冒険です。インデックス投資で資産の土台を固めた上で、安全な範囲でこの冒険の旅に出る。その楽しさと、守るべき規律を伝えるのが、お金の先生の重要な役割です。あなたのガイドで、顧客の人生をより豊かで知的なものに変えてあげてください。