【2025年6月23日号】
今週は、安全資産の代表格である「金(ゴールド)」に注目します。ここ数年の価格変動と、その背景にある要因を理解することで、長期的な視点での金の役割が見えてきます。
年・出来事 | 価格の動き(終値ベース、概算) | 主なドライバー |
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2022年 (6月ごろ=米利上げピーク期) |
1,850 → 1,750 USD/oz と調整 |
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2023年 (3月=米地銀危機) |
1,750 → 2,050 USD (+17%) |
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2024年 (通年) |
2,050 → 2,400 USD超へ (+17%以上) |
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2025年 4月 (地政学リスクの高まり) |
高値圏で推移 約2,300 USD台 |
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直近 6月20日 | 約 2,320 USD |
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ひと言まとめ:金は「インフレ」と「地政学リスク」の双方に備える資産として再評価が進んでいます。
チェック項目 | どう読む? | 代表データ・現在の状況 |
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1. 米10年債利回り | 4.0%を下回ると金利を生まない金にとって追い風になりやすい。 | 現在:4.2%前後で推移 |
2. ドル指数(DXY) | ドルと金は逆相関の関係。ドルが安くなるとドル建ての金は割安になり買われやすい。 | 2024年後半からややドル安傾向。 |
3. 中央銀行の買い越し量 | 世界の潮流を知る上で重要。月50トン超の買いが続けば価格は底堅い。 | 2024年以降も高水準を維持 |
4. ETFの金保有残高 | 残高が増加(資金流入)すれば短期的な上昇要因に。 | 2025年に入り、資金流出傾向が一服。 |
1. 「実質金利」の計算方法は…
答え: $実質金利 = 名目金利 – 期待インフレ率$
解説:「名目金利」は普段ニュースで見る国債などの利率のことです。ここから、世の中が予測する将来の物価上昇率(期待インフレ率)を差し引いたものが「実質金利」です。金利を生まない金は、この実質金利が低い(特にマイナスの)状況で魅力を増します。なぜなら、銀行預金などの価値がインフレで実質的に目減りしてしまうため、価値の保存がきく金が選ばれやすくなるからです。
2. 中央銀行が金を買い続ける理由は…
答え: ①外貨準備の多様化(脱ドル依存)、②通貨の信用の裏付け
解説:多くの国は、基軸通貨である「米ドル」を外貨準備として大量に保有しています。しかし、米ドルだけに頼るとアメリカの経済・金融政策に影響されすぎるため、リスク分散のために普遍的な価値を持つ金を買い増しています。また、どの国にも属さない金は、自国通貨の信認を高める「最後の砦」としての役割も担っています。
3. 資産の何を減らして金を組み入れるか…
答え:この問いに正解はありません。ご自身の投資スタイルによって変わります。
考え方の例:
ご自身の資産全体のリスクバランスをどうしたいか、考える良いきっかけになりますね。
FIREのタイプ | 月の生活費 | 主な収入源 | 備考 |
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LeanFIRE (リーンファイア) | 15万円以下 | 運用益のみ | 最小限の生活コストで実現 |
SideFIRE (サイドファイア) | 15〜25万円 | 運用益+副業収入 (〜10万円) | 完全なリタイアではなく “半リタイア” |
FatFIRE (ファットファイア) | 40万円超 | 運用益のみ | 経済的にゆとりのある生活 |
FIREや資産形成を目指す上で、何よりも先に準備すべきが「生活防衛資金」です。これは、投資の土台であり、心の安定剤になります。
Why? (なぜ必要?) | 具体的な効果 |
---|---|
急な出費で資産を 取り崩さないため |
市場が暴落しているタイミングで、急な医療費や失業が発生しても、焦って投資信託などを売らずに済みます。 |
投資メンタルの 安定剤として |
「いざとなればこのお金がある」という安心感が、株価下落局面でも冷静に積立を継続する力になります。 |
月生活費 × 3〜12 か月分 が一つの目安です。
生活防衛資金を確保した上で、現実的な目標額を見てみましょう。ここでは「SideFIRE」を例にします。
ケース | 生活費 | 防衛資金 | “SideFIRE” 必要資産額* | 毎月投資額 (利回り4%, 15年目標) |
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A. 25歳・独身 | 20万円 | 120万円 (6か月) | 6,000万円 | 約16万円 |
B. 35歳・共働き+子1人 | 28万円 | 196万円 (7か月) | 8,400万円 | 約23万円 |
C. 45歳・高所得 | 35万円 | 350万円 (10か月) | 1億500万円 | 約40万円 |
* 計算式:年間支出 ÷ 4%ルール = 年間支出の25倍
FIRE達成の鍵は「貯蓄率(手取り収入から貯蓄・投資に回す割合)」です。貯蓄率が高いほど、達成までの期間は劇的に短くなります。
貯蓄率 | FIRE達成までの目安年数 |
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10% | 約34年 |
25% | 約20年 |
40% | 約13年 |
60% | 約8年 |
いきなり高い貯蓄率は目指さなくてOK。まずは現在の貯蓄率に「+5%」を目標にしてみましょう。そして、生活防衛資金が貯まったら、その分を投資に回せるので貯蓄率はさらに上がります。定期的に貯蓄率と目標額を見直すことが大切です。
防衛資金は「安全性」と「流動性(すぐに引き出せるか)」を最優先に考えます。
置き場所 | 金利/利回り(目安) | 取り崩し優先順位 | メモ |
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ネット銀行の普通預金 | 〜0.3% | ① 最優先 | いつでも手数料無料で引き出せるのが魅力。 |
定期預金 (6か月など) | 〜0.4% | ② | 普通預金より少し金利が高いが、満期まで引き出せない。 |
円建てMMF | 〜0.5% | ③ | 証券口座内で管理。ほぼ現金同様に即日売却可能。 |
先進国債券ETF | 3〜4% | 非推奨 | “防衛資金を超えた”余剰資金の置き場所。元本変動リスクあり。 |
FIREへの道は、具体的な行動から始まります。以下のステップで、今日から一歩を踏み出しましょう!
初心者の皆さまからよくいただくご質問にお答えします。
A. どちらも長期投資の王道で、素晴らしい選択肢です。正解はありませんが、以下のように考えてみてください。
結論として、迷ったらまずは「全世界株式」から始めてみるのが無難な選択と言えるでしょう。
A. 円安の時に始めると、円建ての価格が高く見え、「高値掴み」に感じるお気持ちはよく分かります。しかし、長期投資の観点では、過度に心配する必要はありません。
投資のタイミングを完璧に計ることはプロでも不可能です。「思い立ったが吉日」として、まずは少額からでも積立投資をスタートさせることが最も重要です。
A. そのお気持ち、投資を始めたばかりの方が通る道なので、とてもよく分かります。長期投資を成功させるには、日々の値動きと「良い距離感」を保つことが大切です。
長期投資は、日々の値動きを楽しむ短期トレードとは全くの別物です。どっしりと構えて、時間を味方につけましょう。