長期投資マガジン365

🔶 今週のマーケットまとめ

テーマ:「円安 × 日経平均 37,700 円前後」— なぜ下がらない?

足もとの数字

  • 日経平均は 5/26–6/6 に 37,600〜37,800 円のレンジで推移。終値 37,724 円(6/6 火引け)で年初来高値圏を維持。 
  • ドル/円は 142〜145 円で横ばい。5 月平均は 144.13 円と3年ぶりの円安水準。 

円安が株を支える3つのメカニズム

  1. 輸出企業の利益押し上げ
    円安になると、海外で稼いだドルを円に換金したときの手取りが増えます。例えば、トヨタの場合「1 円の円安=営業利益 +450 億円」という試算もあり、企業の決算見通しが上方修正されやすくなります。
  2. 海外から見て“値ごろ”
    円建ての日経平均が3万7千円でも、ドルなど外貨に換算すると割安に見えます。例えば、過去の最高値と比較して「ドル建てではまだ ▲12%安い」と判断した海外投資家からの買いが入りやすくなります。
  3. 円安=自社株買いの追い風
    円安で増えた手元の円建てキャッシュ(現金)を、企業が株主還元策の一つである「自社株買い」に回しやすくなります。企業が自社の株を買うと、市場に出回る株数が減るため、一株あたりの価値が上がり、株価が上昇しやすくなります。

“日経は外国人次第”を数字で確認

  • 東証のデータによると、外国人投資家は株式市場の売買代金の約70%を占めています。
  • 5/19–5/23 の週は、海外勢の現物株買い越し額が +2,850 億円となり、5週連続の買い越しとなりました。 
  • BofA フロー調査でも、5 月第4 週に日本株へ 44 億ドルもの資金が流入しており、世界から「資金のシフト先」として注目されていることがわかります。

【分析】この円安はいつまで?今後の注目点

現在の円安の最大の要因は「日米の金利差」です。この金利差が今後どうなるかを見通すことが、為替の先行きを考えるヒントになります。

  1. 日本の金融政策(円高要因?)
    日銀が追加の「利上げ」に踏み切るかが焦点です。利上げが行われれば日本の金利が上がり、金利差が縮小するため、円を買う動きが強まる(=円高になる)可能性があります。
  2. アメリカの金融政策(円高要因?)
    アメリカでは、FRBがいつ「利下げ」に転じるかが注目されています。利下げが始まればアメリカの金利が下がり、同様に金利差が縮小するため、円高要因となります。
  3. 政府・日銀の為替介入(一時的な円高要因)
    急激な円安が進んだ場合、政府・日銀が円を買ってドルを売る「為替介入」を行うことがあります。これは一時的に円高に振れる要因ですが、金利差という根本的な流れを変えるほどの力はない、とされています。

結論:日米の金融政策が変わらない限り、金利差を背景とした円安傾向は当面続く可能性があります。ただし、日米どちらかの利上げ・利下げが具体的に見えてくると、潮目が変わる転換点となりそうです。

🔍 ことばの解説
  • 金利差:2国間の金利の差。投資家はより金利の高い国の通貨を持ちたがるため、金利が高い方の通貨が買われ、価値が上がる傾向があります。
  • 金融政策:国の中央銀行(日本なら日銀、米国ならFRB)が物価を安定させるために行う、金利の上げ下げなどの調整のことです。
  • 為替介入:政府・日銀が為替レートを安定させるために、市場で通貨を売買すること。円安を止めたいときは「円買い・ドル売り」を行います。

🔰 初心者メモ

ニュースでは「円安=輸入品の値上げ」など悪い面が報じられがちですが、投資の世界では輸出企業の利益を増やし、海外マネーを呼び込むプラスの側面があります。

日経平均に連動する投資信託などを持っていると、間接的に「円安のメリット」を享受できます。一方で、日常生活では輸入品の値上げで家計が圧迫されるため、「家計」と「投資」を分けて考えることが大切です。

※試算はトヨタ IR 資料 2025/5 月決算説明会より(1 円の変動影響)。

📈 資産形成のヒント

テーマ:「生活防衛資金」— いくら・どこに置く?パーソナル設計ガイド

投資を始める前に、必ず用意しておきたいのが「生活防衛資金」。万が一の失業や急な出費に備えるためのお金です。自分に合った金額と置き場所を設計してみましょう。

STEPあなたに合わせた決め方目安の金額・置き場所
① 月数を決める
  • 守り重視:公務員・堅実派 ⇒ 6〜12 か月
  • 攻め重視:独身・副業収入あり ⇒ 3〜6 か月
生活費 25 万円なら 75〜300 万円
→ ネット銀行 普通/定期 (0.3%前後)
② 収入と年齢で微調整
  • 20-30 代:転職リスク高 ⇒ +1 か月
  • 50 代:教育・住宅ローン重 ⇒ +2 か月
例)30 代会社員・子1 人:8 か月分
③ “目的別に色分け”
  • 🚑 緊急医療・失職 … 70 %
  • 🔧 家電故障・車検 … 20 %
  • 🎁 冠婚葬祭 … 10 %
普通預金+定期+証券口座のMRFで三分割
④ 投資とリンクさせる手取りの5 %以下を“生活防衛ファンド”に毎月自動積立 → 足りたら超過分を新NISAへ迂回毎月 1.5 万円(手取り30 万円×5 %)
→ 家計簿アプリで残高を見える化

💡 ポイントまとめ

  • 「〇か月分」はあくまで目安です。育児・介護など固定の出費が多い家庭は+αを確保しましょう。
  • 使う場面は「いつ起きるか分からない」突然の出費なので、必ず元本が保証されている商品に置きましょう。利回り狙いはNGです。
  • 充分にたまったら、余剰キャッシュを債券やインデックス投信へ回し、守り(生活防衛資金)と攻め(投資)のバランスをとりましょう。

積立投資をしているあなたへ:今の相場で取るべき行動は?

「円安だけど、海外の投信(オルカンなど)を積み立てて大丈夫?」「株価も高いし、一旦やめるべき?」と不安に思うかもしれません。そんな時の具体的なアクションプランと、その根拠を解説します。

結論:原則「何もしない」。今まで通り積立を続けましょう。

根拠:積立投資の目的は、価格が高い時には少なく、安い時には多く買う「ドルコスト平均法」の効果で、感情に左右されず長期で資産を育てることです。相場を読んで売買するのではなく、淡々と続けること自体が最も有効な戦略だからです。

具体的なアクションプラン
  • 【基本】投資ルールを変えない:
    円安の今、海外資産に連動する投資信託は円換算の評価額が上がっています。これは円安の恩恵です。逆に今後円高になれば、同じ積立額でより多くの口数を買うことができるため、長期で見れば為替の上下も平均化されます。心配せず続けましょう。
  • 【確認】自分のリスク許容度を知る:
    もし今の評価額の変動を見て「怖い」と感じるなら、それはリスクを取りすぎているサインかもしれません。この機会に、積立額が無理のない範囲か、資産配分(株と債券の比率など)が自分に合っているかを見直してみましょう。
  • 【余裕があれば】追加投資(スポット購入)を検討:
    もし相場が大きく下落するような場面があれば、それは安く買えるチャンスです。生活防衛資金とは別の余剰資金があるなら、いつもの積立に加えて少しだけ追加で投資する(スポット購入)のも有効な戦略です。

💬 読者Q&A

Q1. 外国人が買っているうちに日経平均に連動する投信を増やすべき?

A. 円安メリットで企業利益が伸びやすい良い局面です。毎月の積立額を一時的に+2〜3 割増やし、為替の動きが落ち着いたら元の金額に戻す、という方法はアリです。ただし、リスク管理のため“全額集中”は避け、あくまで資産の一部に留めましょう。

Q2. 生活防衛資金は円だけで十分?

A. 目標額の8割を円、残りの2割を外貨建てMMFや米ドル普通預金などで持っておくと、今回のような円安局面でも資産の購買力(価値)が守られやすくなります。為替リスクの分散になります。

Q3. 防衛資金がまだ不足…でも投資は始めたい!

A. まずは手取りの1〜2%といった「少額」から積立投資を始めて「投資に慣れる」ことを優先しましょう。そして、ボーナスが入るごとに生活防衛資金へ優先的に回し、目標(まずは生活費6か月分など)に到達した月から、本格的に投資額を増やしていくのがおすすめです。