長期投資マガジン365

〜未来の安心を作る、はじめの一歩〜

2025年5月12日〜25日号

🔶 今週のマーケットまとめ

「GDPマイナス × 円安」だけを深掘り!

先週発表された日本の1〜3月期の実質国内総生産(GDP)は、前期比年率▲0.7%(※速報値)と、市場の事前予想を下回る結果となりました。「マイナス成長って、景気が悪いのかな?」と少し心配になった方もいらっしゃるかもしれませんね。

内容を見てみると、私たちの日々のお買い物などにあたる「個人消費」や「住宅投資」が少し元気がなく、企業による新しい機械の導入などの「設備投資」も伸び悩んだようです。一方で、海外への「輸出」は円安の良い影響もあって増加しましたが、国内全体の需要の落ち込みをカバーするには至りませんでした。

📈 それでも株価は底堅く、円は1ドル142〜145円あたりで推移。なぜ?

「経済がマイナス成長なのに、株価はそんなに下がらないし、円安も続いているのはどうしてだろう?」と感じるかもしれません。これには、いくつかの理由が考えられます。

  • 輸出企業の業績アップ期待:
    円安は、海外で製品を売る企業(例えば、自動車メーカーや電機メーカーなど)にとっては、追い風となります。よく「1円円安になると、大手自動車メーカーの営業利益が数百億円から二千億円規模で増える」といった試算も聞かれます。これが株価を支える一つの要因です。
  • 海外マネーの日本株シフト:
    アメリカやヨーロッパで金利が上昇している中、日本の株は相対的に「割安感」があり、さらに「円安」の恩恵も期待できるため、海外の投資家から注目が集まっているという見方があります。
  • 日米の金利差は依然として大きい:
    例えば、アメリカの長期金利の代表である10年国債の利回りが約4.5%なのに対し、日本の10年国債の利回りは約1.5%です(※数値は常に変動します)。より高い利回りを求めてドルが買われやすく、その結果として円がなかなか買われにくい(円高に戻りにくい)という構造的な要因があります。

💡初心者向けワンポイント

円安は「悪いニュース」だけではない:
ニュースでは「円安で輸入品が高くなって家計が大変!」という側面が強調されがちですが、実は良い面もあるんです。

  • 👍輸出企業の利益が増える(株価にプラスの影響も期待できます)
  • 👍海外の資産(例えば、外国の株式やドル建ての預金など)を持っている場合、円に換算した時の評価額が上がります

家計に響くのは輸入物価:
食料品やガソリンなどのエネルギー関連商品は海外からの輸入品が多いため、円安になるとこれらの価格が上がり、家計への負担増を感じやすくなります。この対策として、少しでも「円安のメリットを受けられる資産(例えば、外国の株式や債券に投資する投資信託など)」をポートフォリオに加えておくことが考えられます。

📈 資産形成のヒント

債券だけにフォーカス!「守り」を作る3つのコツ

「投資」と聞くと「株式投資」を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、資産を守りながら着実に育てていくためには、「債券」の役割も非常に重要です。今回は、債券を上手に活用して、ご自身の資産ポートフォリオの「守り」を固めるための3つのコツをご紹介します。

コツ 具体策 チェックポイント
1. 債券の“性格”を知る
  • 一般的に、株式よりも値動きが小さい(ローリスク・ローリターン傾向)
  • 満期まで保有すれば、発行体が破綻しない限り、基本的に約束された利息と元本が戻ってくる(※発行体の信用リスクを確認)
  • 債券の価格は市場の金利と逆の動きをする傾向がある(金利が下がると債券価格は上がり、金利が上がると債券価格は下がる)
✅ 日本の10年国債利回り、米国の10年国債利回りなど、国や債券の種類によって金利水準(期待できるリターン)が異なることを意識しましょう。
2. ポートフォリオの“クッション”に使う
  • 目安として、資産全体の10%〜30%程度を債券に配分する(個人のリスク許容度による)
  • 株式などのリスク資産の価格が下落した際に、ポートフォリオ全体の資産価値の大きな変動を和らげる「緩衝材」のような効果が期待できる
✅ 例えば「株式70:債券20:現金10」のように資産配分の比率を決めたら、年に1回程度、そのバランスを見直す(リバランスする)のがおすすめです。

補足:年齢とリスク資産の割合について
一般的に、リスク資産(株式など)の割合の目安として「100 - 年齢 (%)」という考え方があります。これは、年齢が若いほど長期で運用できるためリスクを取りやすく、年齢が上がるにつれて運用期間が短くなり、安定運用を重視するため安全資産(債券や預金など)の割合を増やすという考えに基づいています。
しかし、現在の日本では超低金利が続いています。このため、従来の「100-年齢」ルールで算出される安全資産の割合(特に預金や元本保証型の保険など)では、インフレ(物価上昇)に負けてしまい、実質的な資産価値が目減りしてしまう可能性が高まっています。そのため、安全資産の中でも、ある程度のリターンが期待できる債券を選んだり、NISAなどを活用した非課税での運用を組み合わせたりするなど、時代に合わせた柔軟な対応が求められます。
3. 種類と買い方を絞る(初心者向け)
  • 国内:個人向け国債(変動10年)
    日本国が発行。元本保証で、半年ごとに金利が見直されるためインフレにもある程度対応しやすい設計。最低金利も保証。
  • 海外:米ドル建て短期債ETF(上場投資信託)
    米国の期間が短い債券に分散投資。円安の恩恵を受けつつ、比較的安定した利回り(例:年4%台程度)も期待できる場合がある。証券会社で購入可能。
  • 分散:世界国債インデックス投資信託
    世界各国の国債にまとめて分散投資できる投資信託。手軽に国際分散投資を始められる。
✅ 外貨建ての債券や投資信託は為替変動リスクが伴います。「つみたて投資」や「少額からの投資」で時間を分散し、円高の時に少し多めに、円安が進んだ局面では買い付けの割合を調整するなど、ご自身の判断で工夫するのも一案です。

🛡️ 覚えておくと安心

  • 👉債券は、一般的に“預金よりは増える可能性があり、株式よりは値動きが穏やか”という、中間的な位置づけの金融商品と捉えましょう。
  • 👉金利がある程度上昇した「今」は、債券をポートフォリオに加える良いタイミングと考えることもできます。将来的に金利がピークを打って下がり始めると、既に保有している債券の価格が上昇する(キャピタルゲイン)可能性も出てきます。
  • 👉NISAの成長投資枠を活用すれば、債券ETF(上場投資信託)などから得られる利息や値上がり益も非課税で受け取ることが可能です。制度を賢く活用しましょう。

💬 読者Q&A

Q1. GDPマイナスなのに株は下がらないの?

A1. とても良いご質問ですね!株価というのは、現在の経済状況だけを反映するのではなく、「将来、その会社がどれくらい利益を上げられそうか」という市場の期待感を織り込んで動くという性質があります。

今回のGDPがマイナス成長だったにもかかわらず、株価が大きく崩れない背景には、以下のような期待感が影響していると考えられます。

  • 🔹円安が続くことで、輸出企業の利益が今後も伸びるのではないかという期待。
  • 🔹もし景気が本当に悪化するようなら、政府が何らかの景気対策(例えば、減税や給付金など)を打ち出すのではないかという観測。
  • 🔹新しいNISA制度が始まり、個人の投資家の方々が積極的に株式市場に参加し始めていることによる、相場の下支え効果。

つまり、短期的な経済指標の悪化よりも、中長期的な視点での企業利益の見通しが重視されることが多いのです。もちろん、経済指標も株価に影響を与えますが、「株価は未来を映す鏡」とも言われるように、将来への期待を先取りする性質があることを覚えておくと、日々のニュースの見方も少し変わってくるかもしれません。

Q2. 円安が続くと家計は苦しい?どう備える?

A2. おっしゃる通り、円安が続くと輸入品(例えば、食料品、ガソリン、電気代の一部など)の価格が上がり、家計にとっては負担が増していると感じられますよね。

これに対する備えの一つとして、「海外の資産を持つこと」、つまり外貨建ての資産をポートフォリオに組み入れるという方法があります。具体的には、

  • 🔹外国株式や外国債券に投資する投資信託
  • 🔹海外ETF(上場投資信託)
  • 🔹外貨預金(ただし、金利水準や為替手数料には注意が必要です)

これらの資産は、円安になると円換算での価値が上昇します。つまり、輸入品の価格上昇による家計の「痛み」を、これらの資産の「値上がり益(円ベースで見た場合)」で一部相殺できる可能性があるのです。

いきなり大きな金額で始める必要はありません。まずは「毎月の手取り収入の5%~10%くらいを目安に、ドル建てなど外貨建ての資産をコツコツと積み立てる」というイメージで始めてみてはいかがでしょうか。少額からでも、円安リスクへの長期的な備えになりますよ。

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