長期投資マガジン365

        投資初心者と歩む、資産形成のロードマップ

執筆・監修:まさとFP

        2025年9月29日号 (Vol. 11) 

こんにちは、まさとFPです。
9月後半の株式市場は、高値更新後に調整局面(下落)を迎え、「投資を始めたばかりなのに大丈夫?」と不安になった方もいるかもしれません。

今号は「深掘り特集号」として、(1) なぜ株価が下落したのか(マーケット解説)、(2) 企業の業績とは関係ない「テクニカルな下落」とは何か、(3) 長期投資家が本当に集中すべき「資産効率を最大化する4つの基本」について、基本から応用までストレートに解説します。

【マーケット解説】なぜ9月後半の株価は下落したのか?

9月半ばに付けた高値から、月末にかけては調整局面(下落)となりました。この背景には、単なる「景気が悪くなった」ということではない、複数の要因が絡み合っています。

理由1:米国の「強すぎる経済」が招いた利下げ期待の後退

米国(S&P500)は、9月22日頃に一時史上最高値を更新しましたが、その後は反落しました。これは、市場が2つの相反する情報の間で揺れ動いているためです。

    市場が迷う「2つの要因」

市場は「景気の強さ」と「利下げの可能性」を天秤にかけています。

  • 安心材料(株価上昇要因):
    「インフレ(物価上昇)が落ち着いてきた」というデータ(PCE価格指数)が発表され、「これでインフレ懸念は大丈夫だ」という安心感が広がりました。
  • 懸念材料(株価下落要因):
    ところが同時に、「経済が予想以上に強すぎる」というデータ(GDP改定値など)も出ました。経済が強すぎると、中央銀行は「金利を下げる(利下げする)必要がない」と判断します。市場は「早い利下げ」を期待していたため、それが遠のくことが懸念され、株価が売られました。

この「インフレは安心(プラス)」と「利下げが遠のく(マイナス)」という2つの見方がぶつかり合い、株価は一進一退となったのです。

理由2:景気とは無関係な下落要因「配当権利落ち」

一方、日本(日経平均株価)も高値を付けた後、月末にかけてスッと下落しました。これには米国の株価調整の影響もありますが、もっと大きな「日本特有の事情」が隠されています。

それは「配当落ち」という、業績とは関係のない「テクニカル(仕組み上)な下落」です。

    「配当落ち」の仕組み

日本の企業の多くは9月末に配当金を受け取る株主を確定させます(権利確定日)。その翌日(権利落ち日)には、理論上、配M金として支払われる金額だけ株価が自動的に下がります。

これは分かりやすくピザに例えると、「ピザ(株価)が一切れ(配当金)カットされて手元に渡された」状態です。ピザ本体は小さくなりましたが、手元に一切れあるので、合計の価値は(税金を考えなければ)変わっていません。日経平均全体でもこの影響が表れるため、月末に株価指数が下がりやすくなるのです。

    まさとFPからのアドバイス
米国の調整も、日本の配当落ちも、長期的な企業の成長シナリオが崩れたわけではありません。これらは短期的な「ノイズ(雑音)」です。

大切なのは、日々の株価(ノイズ)に一喜一憂することではなく、私たちは「企業の長期的成長」という本質だけを見て、淡々と「積立」を続けることです。

【資産形成のヒント】「資産効率」を最大化する4つの基本

長期投資で成功するには、「何を買うか」(投資対象)だけでなく、「どう資産を管理するか」(運用の仕組み)も極めて重要です。

この「運用の仕組み」こそが「資産効率」です。同じ金額を投資しても、この効率次第で将来の成果が大きく変わります。

鉄則1:「待機資金(現金)」の機会損失をなくす

最も効率が悪いのは、投資用の資金を「タイミング待ち」のために普通預金に長期間眠らせておくことです。

インフレ(物価上昇)が進む今、銀行に置かれた現金(日本円)の価値は実質的に目減りしていきます。「待つ」時間は、そのお金が働いてくれたかもしれない「機会」を失っている(機会損失)時間なのです。ドルコスト平均法(毎月積立)は、この「機会損失」を防ぎ、感情を排して投資を続けるための、最も合理的な戦略です。

鉄則2:「非課税制度(NISA・iDeCo)」を最優先で利用する

資産効率を劇的に高める仕組み、それがNISAやiDeCoといった「非課税制度」です。

同じ投資信託(S&P500など)を買うのでも、どの口座で買うかによって、将来の手取り額(=本当の利益)が全く変わってしまいます。

        効率が悪い例(課税口座)

  • S&P500に投資
  • 20年後に100万円の利益が出た
  • 税金(約20.3%)が引かれ、手取りは約80万円

        効率が良い例(NISA口座)

  • S&P500に投資
  • 20年後に100万円の利益が出た
  • 税金は0円(非課税)
  • 手取りは丸ごと100万円

難しい投資テクニック(個別株投資など)を覚える前に、(1)「積立」で機会損失を防ぎ、(2)「NISA」で税金の支払いを防ぐこと。この2点が、初心者にとっての「資産効率の最大化」です。


【深掘り編】さらに効率を高める「基本3・4」

NISAで積立を始めたら、次はこの2つに注目してください。ここでライバルに大きな差がつきます。

鉄則3:「手数料(コスト)」という名のブレーキを外す

NISAというアクセルを踏んでいても、高い手数料(信託報酬)という「ブレーキ」を同時に踏んでいては、資産は効率よく増えません。

特に、私たちが長期で保有するインデックスファンドの「信託報酬(運用管理費用)」は、保有中ずっと資産から差し引かれ続ける、最も重いコストです。

    信託報酬「1%」 vs 「0.1%」の衝撃

仮に毎月5万円をS&P500に積立投資し、年率5%で運用できたとします。

Aファンド (信託報酬 年1.0%) Bファンド (信託報酬 年0.1%)
20年後の資産額 約1,835万円 約2,016万円
30年後の資産額 約3,489万円 約4,116万円

※上記は元本1,800万円、年率5%のリターンから信託報酬を差し引いて計算したシミュレーションです。

30年後、投資先(S&P500)は全く同じなのに、選んだファンドが違うだけで約627万円もの差が生まれます。これが「コスト」の正体です。

【結論】
長期投資家にとって、投資信託(ファンド)は「安かろう悪かろう」ではありません。同じ指数(S&P500やオルカン)に連動するファンドなら、信託報酬が最も低いものを選択することが、資産効率の最大化に直結します。

鉄則4:「配当金再投資」で複利のターボを効かせる

「複利」とは、利益が利益を生む「雪だるま式」の仕組みのことです。この複利の力を最大化するのが「配当金の再投資」です。

投資信託には、配当金(分配金)をどう扱うかによって、効率が全く異なる2つのタイプが存在します。

        効率が劣る例(分配型)

  • 利益(配当金)が現金で支払われる
               
  • お小遣い感覚で使ってしまう
               
  • 雪だるまの芯(元本)が育たず、複利効果が止まる
               
        効率が良い例(資産成長型・再投資型)

  • 利益(配当金)が自動で再投資される
  • 利益が元本に組み込まれる
  • 元本が増えるため、次の利益がさらに大きくなる
  • 複利のターボエンジンが作動する
まさとFPからのアドバイス
「毎月分配金がもらえる」と聞くと魅力的に聞こえますが、これは「複利」の力を自ら手放す行為です。資産を本気で増やしたい長期投資家は、必ず「資産成長型(分配金再投資型)」のファンドを選んでください。

読者のギモン解消! Q&Aコーナー

最後に、読者の皆さまから寄せられる疑問に、まさとFPがお答えします。

        Q. S&P500が史上最高値と聞きました。今から始めるのは「高値掴み」になりそうで怖いです。

A. そのお気持ち、とてもよく分かります。「一番高い時に買ってしまうのでは」という不安ですよね。

しかし、S&P500のような株価指数は、長期的な経済成長を反映するものです。(一時的な下落はあっても)長期的に見れば成長を続けてきました。つまり、歴史的に見れば「常に史上最高値圏」を更新し続けてきたのです。

ドルコスト平均法は、まさにその「怖い」という感情を乗り越えるための「仕組み」です。高い時も安い時も淡々と買い続けることで、感情を排除し、購入単価を平準化できます。長期投資において最も怖いのは、「高値掴み」よりも「投資に参加しないこと(機会損失)」なのです。

        Q. 「コア・サテライト戦略」という言葉を聞きました。初心者でもやるべきですか?

A. 「コア・サテライト戦略」とは、資産を「中核(コア)」と「衛星(サテライト)」に分けて運用する手法です。

  • コア(中核資産): 資産の大部分(例:70~90%)を占める、資産の「土台」となる守りの部分。S&P500や全世界株式(オルカン)など、広く分散されたインデックスファンドで、長期的に安定したリターンを目指します。
  • サテライト(衛星資産): 資産の一部(例:10~30%)を占める「攻め」の部分。コアよりも高いリターンを狙い、個別株、特定のセクター(AI関連など)、新興国、金(ゴールド)などに投資します。
まさとFPからのアドバイス
結論から言えば、投資初心者のうちは「サテライト(攻め)」のことは一切考える必要はありません。
まずは「コア(土台)」となるS&P500やオルカンへの積立(100%)に集中し、しっかりとした「資産の土台」を築くことに全力を注いでください。土台が十分にできてから、余裕資金でサテライトを検討するのが王道です。

【Q&A深掘り編】

        Q. 信託報酬0.2%で「1.0%ポイント還元」の証券会社と、信託報酬0.1%で「ポイント還元なし」の証券会社、どちらが効率的ですか?
   

A. 非常に良い質問です。これは「実質コスト」で比較する必要があります。

一見、「0.2%引かれても1.0%戻ってくる」なら前者の方がお得に見えます。しかし、落とし穴があります。

  • 信託報酬(0.2%や0.1%):
    これはファンドの設計図に組み込まれたコストで、半永久的に続きます。
  • ポイント還元(1.0%):
    これは証券会社の「キャンペーン」であることがほとんどです。1年後、5年後に同じ条件である保証はどこにもありません。

【結論】
目先の「ポイント」に惑わされてはいけません。私たち長期投資家は、30年後も続く可能性が極めて高い「信託報酬(固定コスト)」が最も低いファンドを選ぶことを最優先すべきです。

        Q. 投資信託とETF(上場投資信託)は、どちらが効率的ですか?
   

A. これは「複利(鉄則4)」の観点から、明確な答えがあります。

S&P500などに連動する商品には、大きく分けて「投資信託」と「ETF」があります。

  • ETF(上場投資信託):
    配当金(分配金)が現金として自動的に口座に振り込まれます。複利を効かせるには、その現金を使って「手動で」ETFを買い直す必要があります。手間がかかる上、少額だと買い付けもできません。
  • 投資信託(資産成長型):
    配当金がファンドの内部で自動的に再投資されます。あなたが何もしなくても、複利のターボエンジンがフル回転してくれます。100円から積立できる手軽さも魅力です。

【結論】
売買の自由度などETFのメリットもありますが、積立で資産形成を目指す初心者が「複利効率」を最大化する上では、「投資信託(資産成長型)」が圧倒的に有利です。


10月も「米国の政府機関閉鎖リスク」や「雇用統計」など、市場を揺らす可能性のあるニュース(ノイズ)が控えています。しかし、私たち長期投資家は、日々のニュースに一喜一憂する必要はありません。

短期的な情報に惑わされず、まずは今回解説した「4つの基本」(①積立、②NISA、③低コスト、④再投資)を胸に、長期的な視点で資産形成を続けていきましょう。次回の「長期投資マガジン365」(10月中旬号)もご期待ください。

まさとFP