長期投資マガジン365    

        

   

執筆・監修:まさとFP

        

        2025年10月27日号 (Vol. 13)    

こんにちは、まさとFPです。
10月後半(10/14~10/26)の市場は、先週までの「不透明感」から一転し、日米ともに力強く上昇しました。

この上昇の背景には、先週号で懸念していた「米政府機関閉鎖のリスク」が解消されたこと、そして「米国の企業決算シーズン」が本格化したことがあります。市場が「政治不安(ノイズ)」から「企業業績(ファンダメンタルズ)」へと視点を移したこの2週間を振り返ります。

今回の資産形成のヒントは、この流れに最適なテーマとして「株価が長期的に上がる『本当の理由』」について掘り下げます。

【マーケット解説】政治不安の後退と「企業決算」への回帰

S&P500:政府機関の再開と好調な企業決算が市場を牽引

この2週間で、S&P500は6,644ポイント(10/14)から6,791ポイント(10/24終値)へと、約2.2%の力強い上昇を見せました。

  • 要因1:政治リスクの解消(安堵ラリー)
    最大の懸念材料だった米国政府機関の一部閉鎖が、10月18日頃に暫定予算の成立をもって解消されました。これにより、投資家心理が「リスクオフ」から「リスクオン」へと一気に好転しました。
  • 要因2:好調な第3四半期決算の本格化
    JPモルガン・チェースなどの大手金融機関を皮切りに、主要企業の決算発表が本格化しました。これらが市場予想を上回る好調な内容であったため、「景気後退懸念」が和らぎ、企業の業績(ファンダメンタルズ)を見直す買いが入りました。

日経平均株価:米国市場に連動し、4万9000円台を回復

日経平均も米国市場の好転に素直に連動しました。10月14日には「政局不安や米中摩擦」を嫌気して46,847円まで下落する場面もありましたが、その後は持ち直し、10月24日には49,299円まで上昇しました。

    【まさとFPのプロフェッショナル解説】「政策期待」と「外部環境」の綱引き
  • 国内要因(下支え):
    先週号で触れた「高市政権(サナエノミクス)」への積極財政・金融緩和の期待が、引き続き相場の下支え要因となりました。
  • 外部要因(追い風):
    しかし、それ以上に影響が大きかったのは米国の政治リスク解消でした。日本株は海外投資家の売買比率が高いため、米国の市場が安定すると、日本株も安心して買われる傾向が強いです。
  • 結論:
    10月後半の上昇は、国内の「政策期待」という土台の上で、米国の「リスク解消」という追い風が吹いた結果だと分析できます。
    まさとFPからのアドバイス
    この2週間は、市場の関心が「政治(ノイズ)」から「企業業績(本質)」へと移る典型的なパターンでした。政府閉鎖で騒いでいたのが嘘のように、市場は次のテーマ(企業決算)に移っています。

    これこそが、私たち長期投資家が短期的なニュースに振り回されるべきではない理由です。私たちが本当に注目すべきは、次の「資産形成のヒント」で解説する「企業の利益成長」です。

【資産形成のヒント】株価が長期的に上がる「本当の理由」

今、市場の関心は「企業決算(=企業の利益)」に集まっています。なぜなら、それが株価を長期的に動かす唯一最大の「エンジン」だからです。

「株価」と「企業の利益」のシンプルな関係

短期的な株価は、政治不安やニュースなどによる「人気投票」で上下します。しかし、長期的な株価は、その企業の「利益成長」に必ず連動します。「犬の散歩」の例えが有名です。

「犬の散歩」の概念図:株価(犬)と企業の利益成長(飼い主)の関係

図:「犬の散歩」概念図。株価(犬)は短期的には上下するが、長期的には企業の利益成長(飼い主)についていく。

   
        飼い主(=企業の利益)        
               
  • ゆっくりとだが、着実に前に進む。
  •            
  • 長期的な方向性(成長)を決める。
  •        
   
   
        犬(=株価)        
               
  •                 飼い主の周りを元気に走り回る(時には後ろに戻ったり、大きく先に走ったりする)。
  •            
  •                 短期的にはどこへ行くか分からない。
  •        
   

【結論】
犬(株価)は短期的には上下しますが、必ず飼い主(利益)の元に戻り、飼い主が進む方向(長期的な成長)についていきます。

私たちがS&P500に投資する理由は、S&P500という「株価チャート」を信じているからではありません。米国を代表する「500社の企業(飼い主たち)が、今後も利益を伸ばし続ける」という「企業の成長」に投資しているのです。

短期的な「犬(株価)」の動きに惑わされず、「飼い主(企業の利益)」がしっかり前に進んでいるかどうかに注目しましょう。

読者のギモン解消! Q&Aコーナー

最後に、読者の皆さまから寄せられる疑問に、まさとFPがお答えします。

   

        Q. 米国政府の閉鎖が解除されましたが、またすぐに閉鎖するのでは? 政治リスクが怖いです。    

        
         

A. ご指摘の通り、今回成立したのは「暫定予算」であり、根本的な解決には至っていません。政治リスクは今後も必ず発生します。

       

しかし、これこそが「ドルコスト平均法(積立投資)」が最強である理由です。政治リスクを予測して売買(タイミング投資)するのはプロでも不可能です。

私たちは、政府が閉鎖していても再開していても、淡々と積立を続けることで、そうした政治リスクを「時間的に分散」し、無力化することができます。

   
     

        Q. 「企業決算」が大事なのは分かりましたが、500社すべての決算をチェックするのは不可能です。どうすれば良いですか?    

   
       

A. 素晴らしいご質問です。それこそが「インデックス投資」の最大のメリットです。

S&P500やオルカン(全世界株式)に投資するということは、「市場全体(プロの投資家たち)の平均点を取る」ということです。好調な企業(例:決算◎)もあれば、不調な企業(例:決算×)も必ず出てきます。

私たち個人投資家は、その一つ一つを調べる必要はありません。インデックスファンドが自動的に「新陳代謝(不調な企業が外れ、好調な企業が入る)」を行ってくれるからです。私たちは「全体として利益が成長する」ことを信じて、ファンドを保有し続けるだけで良いのです。

   

「政府閉鎖」という霧が晴れ、「企業業績」という本質に市場の目が戻った2週間でした。

短期的な政治のニュース(ノイズ)ではなく、長期的な企業の利益成長(本質)に目を向ける、という長期投資の王道を再確認できました。次回の「長期投資マガジン365」(11月上旬号)もご期待ください。

まさとFP